働き方改革

カメコとラテコの働く部署には元々ウミコというもう１人のＯＬがいた。
しかしウミコが退職したため、ウミコの分の仕事をカメコとラテコの２人でしなければならなくなったのだ。

「ラテコさん、ウミコさんの分の仕事をするのは良いけど残業するのはやめてちょうだい」
「私はカメコ先輩みたいに増えた仕事を定時で終わらせられないんです」
「それは違うわ、３人分の仕事を２人で終わらせられる訳ないからわざと残すのよ。終わらせちゃったらこの部署が２人で足りると思われちゃうでしょう？」

それを聞いたラテコはポカンとする。
カメコは仕事が早いから定時で帰っているのではなく、わざと仕事を残したままにしていたのだ。

「少しずつ残業したら勤務時間を少し伸ばせば良いと思われて契約変更されるわよ？仕事を溜めこんで、何か言われたら１人減ったのに人事が人を入れてくれないから仕事が終わらないって言ってやるのよ」

ズル賢いようにも思える作戦にラテコは動揺したが、カメコの言う通りに残業をやめると当然ながら段々仕事が溜まっていった。
締め切りのある業務を優先し、溜まっていく雑務に怯える日が続いたが、カメコの作戦により「３人分の仕事を２人では終えられず溜まってしまうこと」が証明されたからか人事の求人が本格化し、その甲斐あってかすぐに新人を入れることが決まった。

「私も昔残業してたらウミコさんに言われて同じことをしたのよ。残業代出したくないなら新人入れろって、それで入ってきたのがラテコさんだったってわけ」

新人が入ってしばらくは教えることも多く時間は掛かったが、３人分の仕事を３人で回すようになり、仕事を溜め込むことも残業をする必要も無くなった。
不足している人員を補充するために「残業をするな」と叱ってくれたカメコにラテコは感謝したのだった。