あの子の好みは私を救う

まとめは下にあります。

当日。
遠出するので、駅集合の時間は割合早い。なのできっかり早起きしたはずのサナなのだが、父親様々のおかげで散々な朝だった。こんな様子である。

｢あのー、お父さん。…お手洗いでの新聞は止めて頂きたいのですけど…｣

…返事がない。ただの新聞のようだ。新聞を捲る音。

｢もしもーし。私もう出ないといけないんだけど。変わって欲しいなぁ。｣

……返事がない。ただのお手洗いのようだ。新聞を捲る音。

｢早く出て！ねぇ早く！！｣

………返事がない。ただの…。

｢おい！！！お前……………！！！｣

熱中して、トイレに籠り新聞を読む父親に対し、サナはカズキ君に聞かれたら嫌われてしまうような言葉を残して外出した。
駅のトイレに行くために。

それが誤算であった。新聞もろとも引き摺り出していれば。

夏休みとはいえ平日。女子トイレは列が出来るほどには混んでいた。

待ち合わせ場所の駅はこの駅から遠い。流石に我慢出来なくなったサナは、迷案を閃いた。

即ち、男子トイレにダイブ。

今日はカズキ君の好みを把握した服装をしているのだが、実はカズキ君、ジーンズにキャップ、T-シャツといった、所謂ボーイッシュな女の子が大好きなのである。

抜かりなく、今日はスカートとはおさらば。ということは。

恥を捨て、悟りを開いた。駅の外でこっそり長い髪を帽子に隠し、男子トイレへと駆け込んだサナ。幸いに、個室は空いていた。

…これなら、恥も半減？

半減などしていないが、(多分)周囲に不審に思われることなく任務を遂行したサナは、大好きなカズキ君の好みに感謝した。

…並びに、ありったけの父への怨みを添えて。

…迷走して瞑想して…。お疲れ様でした。

まとめ
自宅トイレで新聞を読む父親のせいで待ち合わせに遅刻しそうになる。
駅のトイレを使うことにしたが女子トイレは大人気。
混んでいた女子トイレの代わりに男子トイレに入る。

怪しまれない(恥晒しにならない…？)格好、カズキ君の好みを意識したボーイッシュファッションで外出して良かった…。