涙の2000円

残業が多く、夜遅くに家に帰ってきては、いつもすぐに寝てしまう父カメオ。家族と過ごす時間がほとんどないことを理解しつつも、家族を養うためだとそれを諦めていた。

ある日、いつものように夜遅く帰ってくると、珍しく幼い息子のウミオが起きていた。
帰宅するやいなやウミオは「お父さんは会社で働いてるんだよね？どれくらいお金もらってるの？一時間だったら、いくら？」とカメオに聞いた。
カメオは不思議に思いつつも「大体、そうだなぁ2000円ぐらいか。」と、答える。ウミオは「2000円･･･」とつぶやく。それを聞いたカメオは、息子の期待に答えられなかったのだろうか。失望させてしまったか。と、少し気を落とした。

翌日、また夜遅くに帰宅すると、今日もウミオは起きていた。
しかし今日のウミオは手に、ずっと使っている自分の貯金箱を抱えて寄ってきた。そして、おもむろに貯金箱から硬貨を一つまた一つとつまみ上げ、困惑しているカメオの手に硬貨の山を築いてこう言った。「お父さん、2000円あげる！これでお父さんの1時間を買えるよね？だから、1時間だけ。一緒に遊んで！」
満面の笑顔のウミオと対をなすように、カメオは震える手から硬貨の山をこぼしつつ、涙を流した。