未来のあなたへ

それは、ずっと前から望んでいたことだった。

「アオイくん、ココア入れたよ…？」

テーブルの上にお揃いのマグカップを置く。

二人が出会って何年になるかな。
わたしたちが同棲を始めたのは一昨年の暮れ頃。
今まで一緒に過ごして、底まで分かって、やはり大好きだと言う気持ちに揺らぎなんてなかった、きっとこの先もそう。
この人のためだったら命だって投げ出せるって、そう思える。

「ありがとね、サクラさん。…あつつ…いつも通り美味しいよ。」

穏やかに微笑むあなたはとっても素敵で、今すぐ結ばれたいって思うのに、あなたの方からは言い出さない。
気を遣っているのかな…？少しもどかしいけれど、大切にしてくれてるって思ったらそれも嬉しいのです。

でも、文字にしなくちゃわからないことだってあるから、手紙にして伝えたいって思いました。
きっと、何年か後に見つけて、笑いあってこのことを話すのかな。そう考えると、手紙がいいなぁ…なんて思って。


それから、頑張って、頑張ってその手紙を書き上げました。思いの丈を全部綴って、伝えたいこと、日頃の感謝、わたしの願いとか、全部。
だけど、だけど…
全部、全部全部書いちゃって、全然足りないけれど、あなたへの想い全てと比べたらもうほんの一粒くらいのものだけど、なんていうか、恥ずかしくて…
プロポーズはあなたから、なんて柄にもなく書いちゃったりして…
面と向かって渡せないこと、本当に悲しいんだよ…？涙が止まらないほどに…
ごめんね、こんなので…。

いつか直さなきゃ、アオイくんにお似合いのお嫁さんになるために。


どうしようか悩んだ私は、とある手段を思いつきました。

だから、わたしは。
郵便局の人には迷惑かけちゃうだろうけど、今回だけは許してください。
ちゃんと届いてくれるかな…？



何日後かの朝、郵便受けを見に行っていたアオイくんがやけににやにやして戻ってきました。
手に持っていたのはわたしの手紙。

アオイくんはごめんね、と小さな声で呟くと、今度一緒に出かけようって言ってくれました。

「期待しててね。」



何年か経ったある日のこと。

「サクラさん、ココア入れたよ。」

お揃いのマグカップを持ったあなたが笑います。

穏やかに微笑むあなたはとっても素敵で、この子にも早く見せてあげたいな。

結論
宛先不備で返送されるようにすることで、同棲している彼に手紙を受け取ってもらおうとした。