死神様によろしく

二人の男は処刑を待っていた。
彼らの処刑は人々に向けて公開されるのだ。
かたや国家転覆を目論んだ反逆者、かたや死神として世間を騒がせた連続殺人犯。
「やめっ…やめろ、そんな、があああああっ！」
この世のものとは思えない断末魔が耳をつんざく。
八つ裂きの刑。悪魔の所業とも言える、残虐の限りを尽くしたかのような処刑、それが今執行されているのだという。
きっと何度殺されようと、あそこまでは苦しみはしないだろう。
私はただ順番を待つだけ。脱出などできようもない。ただの人なのだから。
「私はそんな事を目論んでなどいない！ただ、妻と、娘と幸せに…」

その時、ガタリと音がした。見ると、もう一人の男が何を用いたのか手枷を外していたのだ。
「それを、それを」
奴は私の声を遮るように話し始めた。

「まさか成功するとはねぇ…え？もしかして、私の分も開けろって？それは、できない。細工をしておいただけだから。お前の鍵なんてないんだから。」
「残念だったねぇ…？ごめんね？お兄さん？そんなに顔を歪めないで…ほらぁ？」
この男、まともではない。誰もが感覚的に気づくだろう。
しかし、手枷を拾い上げた男は、私にある提案をする。
それは、天からの、私への手向けだったのかもしれない。
「お前を殺してやる…」
きっと、苦しまないようになんかじゃない、私を殺したいだけだ。自らの手で殺めたいだけ。
家族に、もう一度だけ会いたかった。
少しだけ、考える。

しかし、弾き出された最善の答えは。


“反逆者”は、妻と娘への感謝を口にすると、こう言った。

「死神が私にとっての天使になるとはな、全く。皮肉なものだ。」
「しっかりと冥府へと導いてくれ、落とすなよ？」

奴は何かを呟くと、その手枷〈かま〉を振り下ろした。

結論
処刑される寸前だった男。苦痛の域を超えた、惨たらしい死に様だけは避けるために、男は彼によって与えられる死を受け入れた。