大逆転人生

ある使用人は恐ろしい計画を立てていた。

自分とお嬢様は背格好がほぼ同じ、しかも声まで似ている。関係の薄い人ならすり替わっても気付かないはず。
決行日は、親戚達やお嬢様の友人達がここに集まる誕生日パーティの晩にしよう。騒ぎ疲れて眠ったところに火事を起こせば、親も親戚も友人も他の使用人達も、お嬢様を知る人をほとんど殺せるだろう。

お嬢様には睡眠薬入りの紅茶を飲ませて寝かせ、私の服を着せておく。私はお嬢様が着ていた服を着て屋敷から逃げ出す。
そうすればお嬢様は生き残り、私は死んだ事になるだろう。恐ろしい火事のせいで記憶を失った事にすれば大抵の事は誤魔化せる。
これで、この家の莫大な遺産は私の物だ…！


そして決行の夜が来た。
皆が寝静まるのを待ち、自分とお嬢様の服を取り換え、屋敷中に油を撒いて火を放った。
屋敷は瞬く間に炎に飲まれ、眠っていた者達は逃げる間もなく焼け死んでしまった。
しかし火の回りがあまりにも早く、自分自身も逃げ遅れてしまったのだ。これは大誤算だった。
崩れ落ちる屋敷の中で、私は意識を失った…。


火事から奇跡的に助け出され、目が覚めた私は自分に関する事を一切覚えていませんでした。
顔に大きな火傷を負ってしまいましたが、それでも命が助かって良かったと思いました。
私の両親も火事で亡くなってしまったそうです。なのでこの家は私が継ぐことになります。
まだ分からない事だらけですけど、両親と一緒に仕事をしていた人達の力を借りながら、少しずつ出来る事からやっていかないとですね！



……………私は、なんて恐ろしい事をしてしまったのだろう。
火事の時に記憶を失ったりしなければ、私は私のままこれからも「お嬢様」として暮らしただろうに…。
こんな記憶、思い出したく無かった。

私は、自分の欲望に駆られてお嬢様を含める大勢の人を殺してしまったという過去に耐えられず、命を絶ちました。