Cocktail Fail

今日はハロウィンパーティ。どこもかしこも仮装した人ばかりの会場内で、本物の狼男である男は、狼男を退治しようとする狩人の情報を集めるために紛れ込んでいた。

別に狼男は満月じゃないと狼男化しないとかそういうのはない。任意で変身可能だし、確かに満月の夜は制御が効きにくくなりはしても、基本的に理知的な存在なのある。だがしかし、人は異形を恐れるモノだ。だからこそ、この男も狼男である事実は隠して暮らしていたのだが、最近近辺に狼男狩りの人間が来ていると聞いた男は、丁度良いとハロウィンパーティで情報収集することにしたのである。

とはいえ露骨に聞けば何故知りたいのかと追及されることになるだろう。慎重に気をつかって人に聞いていた男だが、流石に喋りすぎで喉が渇いてしまった。首を巡らせば近くにバーカウンターがあったので、適当にカクテルを頼む。

……しかし、そのバーテンダーに出されたカクテルを一口飲んで、男は体が沸騰するような感覚に襲われた。これは何だ、本当にカクテルなのかと焦りながら、表面上は平静を装ってバーテンダーに問いかけた。

「すまない、これは本当にカクテルなのか？」
「はい、カクテルに間違いありません。

……シルバーブレット、というカクテルですよ」

その名前を聞いて、男は体の異常の理由を悟った。
シルバーブレットは訳が狼男の弱点である「銀の弾丸」であるように、元々魔除けとして作られた酒だ。その魔除けの力が、狼男化している今では過剰に働いてしまったのだろう。これ以上飲むのはまずいと、男は代金だけ払ってそれ以上手をつけず早々にパーティ会場を立ち去った。



しかしその男の後をつける者がいた。先ほどのバーテンダーから連絡を受けた、狼男狩りの狩人である。

ハロウィンパーティとは仮装した人間だけでなく、男のような本物の異形だって隠れて参加していることがある。だからこそ、狩人はバーテンダーに頼み、出すカクテルを魔除けの力があるシルバーブレットのみにして貰っていた。そうして一口飲んだだけで早々に立ち去った男に、当たりをつけて後を追ったのである。

そうしてねぐらに帰った男が本物の狼男なのを確かめた狩人は、銀の弾丸を装填した銃で男を殺したのだった。