親友に託した思い

彼は宇宙飛行士だった。彼がこれから乗る宇宙船には欠陥がいくつもあり、帰還が難しいことを彼は分かっていた。
だが宇宙船はいくつもの欠陥を有したまま出発しなければならなかった。他国で成功している宇宙飛行に対抗するため
政府が圧力をかけたからである。技術者は政府の要望に間に合わせるために欠陥だらけの宇宙飛行船と分かっていて打ち上げを試みた。その打ち上げを阻止しようとするものは容赦なく左遷させられた。

彼には同じ宇宙飛行士の親友が居たが、誰も宇宙船に乗らなければ彼の親友が乗ることになる。そう思い彼は自ら
単独で宇宙船に乗ることを志願した。彼は宇宙に旅立ち、宇宙船内で彼の上司と電話で会話をした。彼自身も
そして彼の上司も彼が決して生きて帰る事は出来ないことを悟っていた。二人は涙し、別れを告げ電話を切った。

出発した宇宙船はすでに制御が難しい状態だったが、彼は目標の軌道周回回数を達し、地球に帰還しようとした。
この時メインパラシュートが開けば助かる可能性を残していた。だがそれが開く事は無かった。減速する事無く
彼の宇宙船は地球の地表へ落下し、大気圏の熱で焦げて肉片となった彼が発見された。

この大事故を受け、政府は次にすぐ出発する予定だった宇宙飛行船の打ち上げを中止した。結果、彼の親友を含む数人は
無駄に命を散らさずに済んだ。
やがて時は経ち、宇宙船は改良され彼の親友は彼が居た宇宙へ向かい、無事に地球に戻ることが出来たという。
彼の親友は有人宇宙飛行成功の第一人者である。彼の親友はこんな名言を残している。
『地球は青かった（地球は青みがかっていた』と。