少女はお見舞いに行った。【尾】

人気急上昇中のアイドルグループ・レンコンスライスは、楽曲やライブパフォーマンスのみならずビジュアル面でも注目を集めており、
この数か月の間に、レンコンスライスのメイクやファッションを真似る若い女性の姿が、巷で多く見られるようなっていた。

そんな中。
レンコンスライスのファンであるナオミは、友人とともにヘアメイクサロンに行った。
レンコンスライス話題の最新楽曲「開かずの金庫ちゃん」のMVで
メンバーが着ていたのと同じデザインの衣装を着用、
そして実際にグループのメイクを担当しているスタッフから直々にメイクを受け、
ナオミは人気No.1メンバーのユズ、友人は人気No.2メンバーのサンドラにそれぞれ扮した。
予想以上の出来栄えに感激して写真撮影を行い、このままの衣装で帰ることにした2人だったが、
このあとおばあちゃんの家にお見舞いに行く予定であるナオミは心配になった。
「私、この姿で外を歩いたら、本物のユズちゃんと間違えられてファンの人が付いてきちゃうんじゃないかしら。そうなったらどう対処すればいいの」
「いや、いくら何でもそんなわけないから！ あんたと人気No.1ユズちゃんとの違いが判らない人間いないから！ 別種の生物なら混同して付いてくるかもね」
友人とそんなやりとりをしながら歩いていたナオミは、おばあちゃんの家に行くために、途中で友人と別れて、地下鉄に乗った。

30分後。
「こんにちは、おばあちゃん。お見舞いに来たよ」
「おお…、ナオミか」「そうだよ」
「来てくれてありがとう、すまないね。ところでナオミや、お前どうしてそんなに目が大きいんだい」
「そういうメイクなんだよ」「メイク？ お前メイクするようになったのかい？」「そうだよ」
「そうかいそうかい。ところでナオミや、お前どうしてそんなに毛の量が多いんだい」
「エクステを付けているからね」
「えくすて…？ そうかいそうかい。ところでナオミや、お前どうして尻尾が生えているんだい」
「そういうファッションなんだよ」「そうかいそうかい」
すると、玄関のチャイムが鳴った。
「宅配便が来たようだ。私が行かないと」そう言って玄関に行ったおばあちゃん。
部屋に戻ってきたおばあちゃんは、ナオミに言った。
「お前、誰か他の人と一緒にここに来たのかい？」
なぜそう言ったのか。