カメコには、付き合って四年目になる年下の彼氏がいた。趣味が合い、いつも優しくしてくれる最高の彼氏。もうすぐ結婚するつもりで、来週には彼を家族に紹介する予定だった。
盛大な結婚式を挙げる日を夢想しながら彼の部屋を掃除していたカメコは、棚の奥に一冊の日記を見つけた。
その日記には、
ある遊園地でハンカチを拾ってもらった女性に一目惚れしたこと、
その運命の人に再び会うために、何年もSNSをサーチしまくったこと、
大学を特定して自分もその大学に行くことにしたこと、
住む家を特定してゴミから趣味や好きな食べ物を調べたこと、
集めた情報からその人物となんとかお近づきになれたこと、
そして、告白して付き合うようになったこと。
これらが、狂気的に思えるほどの数の愛の言葉と一緒に綴られていた。
その言わばストーカー日記を読んで、家族への紹介は今すぐ中止にしよう、とカメコは決めた。
数日後、カメコは久しぶりに実家に帰ることにした。彼を家族に紹介するためではなく、一体何のために?
盛大な結婚式を挙げる日を夢想しながら彼の部屋を掃除していたカメコは、棚の奥に一冊の日記を見つけた。
その日記には、
ある遊園地でハンカチを拾ってもらった女性に一目惚れしたこと、
その運命の人に再び会うために、何年もSNSをサーチしまくったこと、
大学を特定して自分もその大学に行くことにしたこと、
住む家を特定してゴミから趣味や好きな食べ物を調べたこと、
集めた情報からその人物となんとかお近づきになれたこと、
そして、告白して付き合うようになったこと。
これらが、狂気的に思えるほどの数の愛の言葉と一緒に綴られていた。
その言わばストーカー日記を読んで、家族への紹介は今すぐ中止にしよう、とカメコは決めた。
数日後、カメコは久しぶりに実家に帰ることにした。彼を家族に紹介するためではなく、一体何のために?
参加者一覧 2人(クリックすると質問が絞れます)
全員
あさまち(2良:1)
シュガー⭐︎(2良:1正:1)
棚の奥から出てきたその日記を読んだ私は、戦慄した。
それは、日記の至るところに赤文字で好きと書かれているからでも、私の知らない私の写真が何枚も貼られているからでもなかった。
日記の最初のページに書かれていた出来事、遊園地で拾ったハンカチに、全く身に覚えがなかったからだ。
――そもそも、妹と違って成績の良くなかった私は、遊園地に行くことなんてずっと許されていなかった。
もし彼の運命の人が、私ではなく、私の双子の妹だと気づかれてしまったら。私は戦慄した。
私達は一卵性の双子として生まれた。顔も声も全く同じ2人。だけど運動も勉強も、妹のほうがほんの少しだけ得意だった。だから私のほうがほんの少しだけ友達が少なくて、私のほうがほんの少しだけ陰気な性格に育った。
学年を上がるにつれ、2人の差は縮まるどころかより顕著なものになっていった。私は妹の下位互換になった。
私は私であると証明するために、妹とは違う、遠く離れた大学に通うことにした。
夢にまで見た一人暮らし。妹がいることは誰にも告げず、ひたすらに妹の影を生活から排除した。
名門の大学で、持ち前の明るさを活かしてたくさん友人を作っているであろう妹のことは、考えないように努力した。私はここで、私だけの幸せを掴むのだから。
そしてある日、私は運命の人と出会った。
彼との日々は幸せだった。
彼は他の誰でもない、私だけを見てくれていた。一生私だけを愛するのだと、私に囁いてくれた。
彼を家族に紹介するために、もう何年も帰っていなかった実家に帰ることに決めた。彼が隣にいるなら、妹と顔を合わせる憂鬱にも耐えられる気がした。むしろ、私は私だけの幸せを掴み取ったのだと、勝ち誇ってやるつもりだった。
だけど、運命は残酷だった。
彼が見ていたのは、追い続けていたのは、私ではなく忌々しい妹のほうだった。
もし彼が妹の姿を見て、別の可能性に気づいてしまったら。もし妹が彼の姿を見て、遊園地の出来事を思い出してしまったら。
彼の愛の深さを知れば知るほど、それが自分に向かなくなることが恐ろしくなった。
彼と妹を会わせるわけにはいかない。彼を家族に紹介するのは中止にする。だけど、これだけでは不十分だ。
私は彼と、誰もが羨むような盛大な結婚式を挙げるのだ。その席に妹だけを招待しないなんて、そんなことはできない。
仮に妹を結婚式に呼ばなかったとしても、彼の存在が妹にバレることは避けられない。
もっと完璧に、妹を私の人生から排除しなければならない。
必要なものを取り揃える。綿密に計画を立てる。
私は、妹を殺すために実家に帰った。
彼の愛を受け取っていいのは、私だけだ。
それは、日記の至るところに赤文字で好きと書かれているからでも、私の知らない私の写真が何枚も貼られているからでもなかった。
日記の最初のページに書かれていた出来事、遊園地で拾ったハンカチに、全く身に覚えがなかったからだ。
――そもそも、妹と違って成績の良くなかった私は、遊園地に行くことなんてずっと許されていなかった。
もし彼の運命の人が、私ではなく、私の双子の妹だと気づかれてしまったら。私は戦慄した。
私達は一卵性の双子として生まれた。顔も声も全く同じ2人。だけど運動も勉強も、妹のほうがほんの少しだけ得意だった。だから私のほうがほんの少しだけ友達が少なくて、私のほうがほんの少しだけ陰気な性格に育った。
学年を上がるにつれ、2人の差は縮まるどころかより顕著なものになっていった。私は妹の下位互換になった。
私は私であると証明するために、妹とは違う、遠く離れた大学に通うことにした。
夢にまで見た一人暮らし。妹がいることは誰にも告げず、ひたすらに妹の影を生活から排除した。
名門の大学で、持ち前の明るさを活かしてたくさん友人を作っているであろう妹のことは、考えないように努力した。私はここで、私だけの幸せを掴むのだから。
そしてある日、私は運命の人と出会った。
彼との日々は幸せだった。
彼は他の誰でもない、私だけを見てくれていた。一生私だけを愛するのだと、私に囁いてくれた。
彼を家族に紹介するために、もう何年も帰っていなかった実家に帰ることに決めた。彼が隣にいるなら、妹と顔を合わせる憂鬱にも耐えられる気がした。むしろ、私は私だけの幸せを掴み取ったのだと、勝ち誇ってやるつもりだった。
だけど、運命は残酷だった。
彼が見ていたのは、追い続けていたのは、私ではなく忌々しい妹のほうだった。
もし彼が妹の姿を見て、別の可能性に気づいてしまったら。もし妹が彼の姿を見て、遊園地の出来事を思い出してしまったら。
彼の愛の深さを知れば知るほど、それが自分に向かなくなることが恐ろしくなった。
彼と妹を会わせるわけにはいかない。彼を家族に紹介するのは中止にする。だけど、これだけでは不十分だ。
私は彼と、誰もが羨むような盛大な結婚式を挙げるのだ。その席に妹だけを招待しないなんて、そんなことはできない。
仮に妹を結婚式に呼ばなかったとしても、彼の存在が妹にバレることは避けられない。
もっと完璧に、妹を私の人生から排除しなければならない。
必要なものを取り揃える。綿密に計画を立てる。
私は、妹を殺すために実家に帰った。
彼の愛を受け取っていいのは、私だけだ。
24年06月24日 18:48
[うつま]
[☆2023良いお年を]
相談チャットです。この問題に関する事を書き込みましょう。
ブックマーク(ブクマ)って?
自分が正解した問題・出題者への賛辞・シリーズ一覧・良い進行力など、基準は人それぞれです。
自分専用のブックマークとしてお使い下さい。
Goodって?
「トリック」「物語」「納得感」そして「良質」の4要素において「好き」を伝えることができます。
これらの要素において、各々が「良い」と判断した場合にGoodしていきましょう。
ただし進行力は評価に含まれないものとします。
ブクマ・Goodは出題者にとってのモチベーションアップに繋がります!「良い」と思った自分の気持ちは積極的に伝えていこう!
物語:1票ブクマ:2
自分が正解した問題・出題者への賛辞・シリーズ一覧・良い進行力など、基準は人それぞれです。
自分専用のブックマークとしてお使い下さい。
Goodって?
「トリック」「物語」「納得感」そして「良質」の4要素において「好き」を伝えることができます。
これらの要素において、各々が「良い」と判断した場合にGoodしていきましょう。
ただし進行力は評価に含まれないものとします。
ブクマ・Goodは出題者にとってのモチベーションアップに繋がります!「良い」と思った自分の気持ちは積極的に伝えていこう!