「お腹が空いたんだったら家にお入りなさい」

簡易解説
殺虫剤入りのチョコレートをグレーテルは食べてしまったため。

長い解説
今日は月に一度の買い物の日、いつものように買い物に森から町に出かけていた魔女は家に帰ると、家の前で女の子を抱え泣いている男の子を見つけた。
もしかして森にいる獣に襲われたのだろうかと考えた魔女は、男の子に話を聞くことにした。

「どうしたんだい、坊や。　何があったんだい」

そう声をかけて、男の子の方をのぞき込むと、

「ああ、ああ、あのね……グレーテルが……グレーテルが！　うぅ……突然苦しみだして、動かなくなっちゃったの！　何回声をかけても返事してくれなくて……うぅ……」

と男の子が泣きながらいうではないか。
魔女は、とりあえず家の中に運び込むよう男の子に言い、とりあえず飴でできたソファーに寝かせ、グレーテルと呼ばれていた女の子をみた。
そして、魔女はグレーテルの呼吸や脈を確認したが、時すでに遅し。
もうグレーテルは天国に旅立ってしまっていた。

そのことを伝えようと男の子の方に振り向いた魔女だったが、視界に入ったテーブルが半分欠けているのに気づいた。
そして、魔女は男の子にこのお菓子の家を食べたのかを尋ねると、

「ごめんなさい。　どうしてもお腹が空いてしまって食べてしまったんです」

と男の子が答えた。そして、グレーテルという少女もお菓子を食べたのかを問うと、男の子は小さく首を縦に振った。

(グレーテルという少女もお菓子を食べたのか。　もしや家に使われている殺虫剤入りのチョコレートを食べてしまったのではなかろうか)

そう思った魔女は再びグレーテルの方を見ると、手がチョコレートを掴んだために茶色に汚れているのに気づいた。

このお菓子の家の外側の屋根や壁には雨が降っても水分を吸収しないようにチョコレートを使用しており、虫に食べられないように殺虫剤がチョコレートには含まれている。
そして、その殺虫剤は人間にも害を与える薬であり、殺虫剤入りのチョコレートを食べると亡くなってしまう。

そのことに気づいた魔女は、男の子にこのお菓子の家の外側には虫が食べないように毒が入っていたから、グレーテルは亡くなってしまったと伝えた。
そして、そのことを聞いた男の子はその場で泣き崩れた。

魔女は男の子を慰めて話を聞いていくうちに、両親に二人が捨てられたことを悟ってしまった。
可哀想に思った魔女は、グレーテルを丁寧に埋葬し、男の子(ヘンゼル)を弟子として育てていくことにした。

そして、数十年後。
大きくなったヘンゼルは、お腹を空かせてお菓子の家に近づいてくる兄弟を見つけた。
そして、その兄弟が壁に手を伸ばそうとしたのを見つけてこう言った。

「お腹が空いたんだったら家にお入りなさい」