夕暮れのカルマ

「おまえ、一体何考えてんだよ！」

放課後、屋上にカメオを呼びつけたウミオは、カメオを殴り飛ばして声を荒げた。

「俺になりすまして登校するなんて、おかげで俺は今日散々な目に遭ったんだぞ！？」

双子の兄弟であるカメオとウミオは、顔は瓜二つだったが、2人を取り巻く環境は平等とは程遠かった。

クラスの中心的存在として充実した学校生活を送り、家でも親から溺愛を注がれていたウミオに対し、
カメオは学校ではいじめられ、家でも居場所はなく、希望のない日々を過ごしていた。

しかし、そんな2人の日常も今日で全て終わる。

カメオから自分の制服を奪い返そうとしたウミオに対し、カメオは自傷行為に使用する愛用のナイフを取り出してウミオに向けた。

ウミオは慌ててカメオを突き飛ばすが、カメオはそのままジリジリとウミオの方へ迫ってくる。

カメオの殺意を察したウミオは、自分の顔から血の気が引いていくのを感じた。

「お、おい、落ち着けカメオ。馬鹿な真似はよせ！」

後退った足がいつの間にか屋上の端にかかり、バランスを崩したウミオの体が宙に放り出される。

その時、ウミオが咄嗟に伸ばした手が左手であったことに気付いて、カメオはウミオが左利きであったことを思い出した。

ウミオとの入れ替わりを勘付かせないため、カメオは利き腕の右手で刻んだ腕の傷を他人には絶対に見られてはいけないと悟ったのだった。