恋人同士であるフレディとサラは夜の森の中にいた。
フレディの持つリボルバーには1発の弾丸が装填されている。
フレディはサラに銃口を突き付けてこう尋ねた。
「君は神様が本当にいると信じるかい?」
「信じるわ」
「・・・分かった。僕も信じるよ」
フレディは、リボルバーから弾丸を抜き取った。
この後、フレディは誰を殺すだろうか?
フレディの持つリボルバーには1発の弾丸が装填されている。
フレディはサラに銃口を突き付けてこう尋ねた。
「君は神様が本当にいると信じるかい?」
「信じるわ」
「・・・分かった。僕も信じるよ」
フレディは、リボルバーから弾丸を抜き取った。
この後、フレディは誰を殺すだろうか?

らてらておぶざまんす?2023-1
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正解:狼男
物語:
アオオオオオオオオオオォォォォン・・・
「狼男だー!! 狼男が出たぞー!!! 狼男が、ぎゃああああああああああああああああああああああッ!!!」
満月の夜。小さな町に1頭の怪物が現れた。
その怪物が外から来たのか、元からいたのか。それは誰にも分からないことだった。
確かなことは、その怪物の名が『狼男』ということだけである。
・
・
・
両親を早くに亡くして独り暮らしのサラは、2階にある寝室のベッドの中に隠れながらも、窓から目を離せずにいた。
突然、窓ガラスが強く叩かれてバシバシッと音を立てた。
「キャアアアアッ!!」
「サラ! 僕だ! フレディだ!」
「フレディ! い、今開けるわ!」
屋根をよじ登って現れたフレディは恋人のサラに招き入れられると、窓にリボルバーを向けながらサラに話し掛ける。
「君が無事で良かった! 町中に狼男が現れたんだ、逃げよう! 家に閉じ籠もっていても殺されるのを震えて待つだけだ!」
「逃げるってどこに!?」
「それは・・・!」
いやあああああああああああぁぁぁぁ・・・
窓の外、遠くから悲鳴が上がった。そしてそれに続くように遠吠えが響き渡る。
ガラスの割れる音、木の破れる音がしたのも幻聴では無い。
直後、銃声が鳴った。
何発もの銃声がして、男たちの歓声が上がった。
そして、男たちの歓声は断末魔へと変わっていった。
「ここに来る前に、僕も皆と一緒に応戦したんだ・・・だけど、狼男は銃で撃たれても怯むだけで死なないんだ・・・伝説の怪物なんだよ! もうこの町に安全な場所は無い!」
「・・・分かったわ。だったら、町の南にある女神の森に行きましょう」
「森は危険だ! 森が奴の棲み処かも知れない!」
「あそこは女神の森よ!」
「今でもそんなこと言ってるのは老人と君ぐらいだよ!」
「どこも危険だって言うなら、私は私の行きたい所に行くわ」
「あーもう、分かったよ! ――で、それは何?」
「銀のロザリオよ。吸血鬼以外にも効果があるかは分からないけど」
「だと良いね。じゃあ行くよ!」
2人は窓から外に出ると、急いで町の南門へと向かった。
生憎、悲鳴は町の北部から聞こえていた。惨劇の町を抜け出すことは容易かった。
しかし、この夜の風は南風であった。
若い2人の男女の匂いはやがて、町中での惨殺に飽いた狼男の鼻腔をくすぐることとなる。
・
・
・
森の中は静まり返っていた。獣たちも異形の捕食者に恐れをなしているのである。
サラとフレディは、随分と森の奥まで逃げていた。
真夜中の森に時折差し込む満月の輝きは、行く末を照らす希望の灯火にも、決して逃がさぬ眼光にも思えた。
森を先導するサラの足取りには確かなものがあった。
「闇雲に進んでるワケじゃなさそうだけど、この先に絶好の隠れ家でもあるのかい?」
「もうすぐ着くわ。フレディとも子供の頃に行ったことある場所」
「それってもしかして」
「そう、『女神の泉』。あそこなら、きっと女神様が守ってくれる」
「泉って・・・開けた場所にあるじゃないか。もっとこう、何かあるだろ」
「うーん。でも、もう着いたし」
森の奥にある泉は神秘さと清らかさと、そしてそれ以上に荘厳さを湛えていた。
「何にせよ、少し休もう」
そう言ってフレディが泉の水を掬おうとしたその時。
アオオオオオオオオオオォォォォン・・・
極限の緊張状態で研ぎ澄まされている2人の耳は、町から響いたのならば聞こえる筈の無い遠吠えを、森の中で微かに確かに聞いた。
狼男が、2人に迫っていた。
逃げ場が無いことは、明白だった。
満月は雲に隠れ、泉には絶望の闇が漂い始めていた。
「ごめんなさい、フレディ。ここもすぐに見付かるわね・・・」
「良いさ、どこへ逃げても同じことだったんだ」
しばしの沈黙の後、フレディは切り出した。
「サラが狼男に惨たらしく殺されるなんてこと、僕には耐えられない。 僕の手で、君を苦しまずに眠らせたい」
フレディの確かな覚悟と哀しいまでの愛を感じたサラは、それを拒む気にはなれなかった。
「そう・・・弾丸は何発あるの? 既に町の中で使ったんでしょう?」
サラの家に着く前に、フレディは他の町民と共に狼男に向けて発砲している。
フレディがリボルバーのシリンダーを取り出すと、そこには1発だけ弾丸が残っていた。
「・・・・・・君の分と、僕の分の、ちゃんと2発あるよ」
「ウソね」
「・・・ああ。1発だけだ。 でも、だからこそ、この1発はサラを苦しめないために使いたい。それが、僕にとっても救いなんだ」
『救い』。その言葉を聞いて、サラは胸に提げたロザリオにそっと触れる。
それと同時に、サラには1つの可能性が浮かんだ。
「・・・ねえ、この地に伝わる『金の斧』って話を知ってる?」
「知ってるよ。知ってるけど、それがどうしたって言うんだ」
「あのお話では、泉に斧を落とした正直者の木こりは、金の斧と銀の斧を貰えるの。 その最後の弾丸を泉に投げたら、金の弾丸と一緒に銀の弾丸が手に入らないかしら?」
「バ、バカなことを言うなよ。あんなのおとぎ話だ」
「でも狼男はいるじゃない。狼男がいるなら、神様だっているわよ」
「たとえこの泉が伝説の泉だとして、神様がいたとしてッ、銀の弾丸が手に入ったとしてッ! 狼男に銀の弾丸が効くなんて保証は無いじゃないか・・・」
「・・・そうね。 でもね、私だってフレディだけに苦しい思いをさせるなんて嫌なのよ?」
「・・・・・・」
フレディはシリンダーを銃身に入れ直すと、サラに銃口を突き付けてこう尋ねた。
「君は神様が本当にいると信じるかい?」
「信じるわ」
サラの迷いの無い答えを聞いたフレディは、
「・・・分かった。僕も信じるよ」
そう返して、再びリボルバーからシリンダーを取り出した。
フレディはシリンダーから最後の弾丸を抜き取ると、もう一度サラの目を見た後に、弾丸を泉の中に放り込んだ。
いつ狼男がここに来るとも分からぬ中、2人は静かに神に祈った。
雲の切れ間から満月の光が差し込むと泉は光り輝き、その輝きは次第に月明かりとは呼べないほどに強くなり、そしてついに・・・泉から女神が姿を現した。
呆然とする2人に対し、女神は質問を投げかける。
「あなたたちが落としたのは金の弾丸? 銀の弾丸? それともこの普通の弾丸ですか?」
「・・・・・・」
「・・・・・・ハッ。フレディ、何ボーっとしてるのよ」
「あ、いや、ちょっと信じられなくて。って、それはサラもじゃないか。 ――じゃなくて! ええと、銀の・・・」
「バカ! ふ、普通の弾丸です」
「そちらの彼はともかく、貴女は正直者ですね。褒美に3つ全ての弾丸をあげましょう」
「ありがとう女神様!」
「早くしないと・・・ッ!?」
「アオオオオオオオオオオオン!!」
フレディが振り返った森の中の数十メートル向こうで、2人を見付けた狼男が勝ち誇るように遠吠えを上げた。
瞬く間に狼男の巨体が2人へと迫った。
「サラ! 早く!」
「コレよ!」
「グルルルルルルルアァァァ!!」
「くたばれぇぇぇぇッ!!」
乾いた破裂音を伴ってリボルバーから弾丸が放たれた。
弾丸はフレディの眼前に迫っていた狼男の眉間に命中すると、狼男を殴り飛ばすように後方へと吹き飛ばした。
森の中には火薬の残り香と静寂が広がった。
「・・・・・・た、助かった・・・」
フレディは構えていたリボルバーを下ろすと、ガックリと項垂れた。
「はい」
「なに?」
「もう1発」
「なんで?」
「さっき渡したの普通の弾丸だったわ」
「ッガアアアアアアアアアアァァァァァッッ!!!」
「オーーーーーーーーーーーーマイガッッッッ!!」
パァンッ!
飛び起きて再び襲い掛かって来た狼男の真っ赤な口の中に、銀の弾丸が吸い込まれた。
今度こそ狼男は雷に打たれたようにビクンと痙攣し、その巨体がフレディに降り注ぐように傾く。
サラがフレディを引っ張り倒すと、狼男の身体は2人の横を通り過ぎて泉に倒れ込み、大きな飛沫を上げて飲み込まれていった。
森は再び静寂に包まれた。
「えーっと、うん、今度こそ完全に助かったみたい」
「サ~~~ラ~~~~!」
「ご、ごめんなさい。どっちも銀色で似てたから」
「ハァァァ、君の信心深さに免じて許すよ・・・」
次の瞬間、満月に照らされた泉が再び光を放つと、女神がもう一度現れた。
唖然とする2人に対し、女神は質問を投げかける。
「あなたたちが落としたのは金の狼男? 銀の狼男? それともこの普通の狼男ですか?」
毛皮の品定めをさせるかのように、ぐったりとした3体の狼男を宙に並べてみせる泉の女神。
フレディとサラは顔を見合わせ、女神の方を向き直すと声を揃えて言った。
「「金の狼男です」」
・
・
・
惨劇の夜が明けても、町は騒然としていた。
無惨に殺された人々の死体が町の至る所にある。
悲鳴と嗚咽と喧騒は、太陽が高く昇っても鳴り止まない。
町中の誰もが不安に囚われていた。
「狼男はどこへ消えたのか? また現れるのか?」。そればかりが人々の関心であった。
町には眠れぬ夜が続いた。
しばらくして、詳細な記憶が薄れるにつれて、あれは毛皮を被った猟奇殺人鬼だったという説が広まり始めた。
そしていつしか、あの夜の出来事は眼前で繰り広げられた殺戮を脳が拒絶したための集団幻覚と定義付けられ、警察署の未解決事件ファイルの中で眠りに付いた。
あの夜が幻では無いことも狼男が女神によって完全に消滅させられたことも、フレディとサラと、残った金の弾丸が知っている。
The End.
物語:
アオオオオオオオオオオォォォォン・・・
「狼男だー!! 狼男が出たぞー!!! 狼男が、ぎゃああああああああああああああああああああああッ!!!」
満月の夜。小さな町に1頭の怪物が現れた。
その怪物が外から来たのか、元からいたのか。それは誰にも分からないことだった。
確かなことは、その怪物の名が『狼男』ということだけである。
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両親を早くに亡くして独り暮らしのサラは、2階にある寝室のベッドの中に隠れながらも、窓から目を離せずにいた。
突然、窓ガラスが強く叩かれてバシバシッと音を立てた。
「キャアアアアッ!!」
「サラ! 僕だ! フレディだ!」
「フレディ! い、今開けるわ!」
屋根をよじ登って現れたフレディは恋人のサラに招き入れられると、窓にリボルバーを向けながらサラに話し掛ける。
「君が無事で良かった! 町中に狼男が現れたんだ、逃げよう! 家に閉じ籠もっていても殺されるのを震えて待つだけだ!」
「逃げるってどこに!?」
「それは・・・!」
いやあああああああああああぁぁぁぁ・・・
窓の外、遠くから悲鳴が上がった。そしてそれに続くように遠吠えが響き渡る。
ガラスの割れる音、木の破れる音がしたのも幻聴では無い。
直後、銃声が鳴った。
何発もの銃声がして、男たちの歓声が上がった。
そして、男たちの歓声は断末魔へと変わっていった。
「ここに来る前に、僕も皆と一緒に応戦したんだ・・・だけど、狼男は銃で撃たれても怯むだけで死なないんだ・・・伝説の怪物なんだよ! もうこの町に安全な場所は無い!」
「・・・分かったわ。だったら、町の南にある女神の森に行きましょう」
「森は危険だ! 森が奴の棲み処かも知れない!」
「あそこは女神の森よ!」
「今でもそんなこと言ってるのは老人と君ぐらいだよ!」
「どこも危険だって言うなら、私は私の行きたい所に行くわ」
「あーもう、分かったよ! ――で、それは何?」
「銀のロザリオよ。吸血鬼以外にも効果があるかは分からないけど」
「だと良いね。じゃあ行くよ!」
2人は窓から外に出ると、急いで町の南門へと向かった。
生憎、悲鳴は町の北部から聞こえていた。惨劇の町を抜け出すことは容易かった。
しかし、この夜の風は南風であった。
若い2人の男女の匂いはやがて、町中での惨殺に飽いた狼男の鼻腔をくすぐることとなる。
・
・
・
森の中は静まり返っていた。獣たちも異形の捕食者に恐れをなしているのである。
サラとフレディは、随分と森の奥まで逃げていた。
真夜中の森に時折差し込む満月の輝きは、行く末を照らす希望の灯火にも、決して逃がさぬ眼光にも思えた。
森を先導するサラの足取りには確かなものがあった。
「闇雲に進んでるワケじゃなさそうだけど、この先に絶好の隠れ家でもあるのかい?」
「もうすぐ着くわ。フレディとも子供の頃に行ったことある場所」
「それってもしかして」
「そう、『女神の泉』。あそこなら、きっと女神様が守ってくれる」
「泉って・・・開けた場所にあるじゃないか。もっとこう、何かあるだろ」
「うーん。でも、もう着いたし」
森の奥にある泉は神秘さと清らかさと、そしてそれ以上に荘厳さを湛えていた。
「何にせよ、少し休もう」
そう言ってフレディが泉の水を掬おうとしたその時。
アオオオオオオオオオオォォォォン・・・
極限の緊張状態で研ぎ澄まされている2人の耳は、町から響いたのならば聞こえる筈の無い遠吠えを、森の中で微かに確かに聞いた。
狼男が、2人に迫っていた。
逃げ場が無いことは、明白だった。
満月は雲に隠れ、泉には絶望の闇が漂い始めていた。
「ごめんなさい、フレディ。ここもすぐに見付かるわね・・・」
「良いさ、どこへ逃げても同じことだったんだ」
しばしの沈黙の後、フレディは切り出した。
「サラが狼男に惨たらしく殺されるなんてこと、僕には耐えられない。 僕の手で、君を苦しまずに眠らせたい」
フレディの確かな覚悟と哀しいまでの愛を感じたサラは、それを拒む気にはなれなかった。
「そう・・・弾丸は何発あるの? 既に町の中で使ったんでしょう?」
サラの家に着く前に、フレディは他の町民と共に狼男に向けて発砲している。
フレディがリボルバーのシリンダーを取り出すと、そこには1発だけ弾丸が残っていた。
「・・・・・・君の分と、僕の分の、ちゃんと2発あるよ」
「ウソね」
「・・・ああ。1発だけだ。 でも、だからこそ、この1発はサラを苦しめないために使いたい。それが、僕にとっても救いなんだ」
『救い』。その言葉を聞いて、サラは胸に提げたロザリオにそっと触れる。
それと同時に、サラには1つの可能性が浮かんだ。
「・・・ねえ、この地に伝わる『金の斧』って話を知ってる?」
「知ってるよ。知ってるけど、それがどうしたって言うんだ」
「あのお話では、泉に斧を落とした正直者の木こりは、金の斧と銀の斧を貰えるの。 その最後の弾丸を泉に投げたら、金の弾丸と一緒に銀の弾丸が手に入らないかしら?」
「バ、バカなことを言うなよ。あんなのおとぎ話だ」
「でも狼男はいるじゃない。狼男がいるなら、神様だっているわよ」
「たとえこの泉が伝説の泉だとして、神様がいたとしてッ、銀の弾丸が手に入ったとしてッ! 狼男に銀の弾丸が効くなんて保証は無いじゃないか・・・」
「・・・そうね。 でもね、私だってフレディだけに苦しい思いをさせるなんて嫌なのよ?」
「・・・・・・」
フレディはシリンダーを銃身に入れ直すと、サラに銃口を突き付けてこう尋ねた。
「君は神様が本当にいると信じるかい?」
「信じるわ」
サラの迷いの無い答えを聞いたフレディは、
「・・・分かった。僕も信じるよ」
そう返して、再びリボルバーからシリンダーを取り出した。
フレディはシリンダーから最後の弾丸を抜き取ると、もう一度サラの目を見た後に、弾丸を泉の中に放り込んだ。
いつ狼男がここに来るとも分からぬ中、2人は静かに神に祈った。
雲の切れ間から満月の光が差し込むと泉は光り輝き、その輝きは次第に月明かりとは呼べないほどに強くなり、そしてついに・・・泉から女神が姿を現した。
呆然とする2人に対し、女神は質問を投げかける。
「あなたたちが落としたのは金の弾丸? 銀の弾丸? それともこの普通の弾丸ですか?」
「・・・・・・」
「・・・・・・ハッ。フレディ、何ボーっとしてるのよ」
「あ、いや、ちょっと信じられなくて。って、それはサラもじゃないか。 ――じゃなくて! ええと、銀の・・・」
「バカ! ふ、普通の弾丸です」
「そちらの彼はともかく、貴女は正直者ですね。褒美に3つ全ての弾丸をあげましょう」
「ありがとう女神様!」
「早くしないと・・・ッ!?」
「アオオオオオオオオオオオン!!」
フレディが振り返った森の中の数十メートル向こうで、2人を見付けた狼男が勝ち誇るように遠吠えを上げた。
瞬く間に狼男の巨体が2人へと迫った。
「サラ! 早く!」
「コレよ!」
「グルルルルルルルアァァァ!!」
「くたばれぇぇぇぇッ!!」
乾いた破裂音を伴ってリボルバーから弾丸が放たれた。
弾丸はフレディの眼前に迫っていた狼男の眉間に命中すると、狼男を殴り飛ばすように後方へと吹き飛ばした。
森の中には火薬の残り香と静寂が広がった。
「・・・・・・た、助かった・・・」
フレディは構えていたリボルバーを下ろすと、ガックリと項垂れた。
「はい」
「なに?」
「もう1発」
「なんで?」
「さっき渡したの普通の弾丸だったわ」
「ッガアアアアアアアアアアァァァァァッッ!!!」
「オーーーーーーーーーーーーマイガッッッッ!!」
パァンッ!
飛び起きて再び襲い掛かって来た狼男の真っ赤な口の中に、銀の弾丸が吸い込まれた。
今度こそ狼男は雷に打たれたようにビクンと痙攣し、その巨体がフレディに降り注ぐように傾く。
サラがフレディを引っ張り倒すと、狼男の身体は2人の横を通り過ぎて泉に倒れ込み、大きな飛沫を上げて飲み込まれていった。
森は再び静寂に包まれた。
「えーっと、うん、今度こそ完全に助かったみたい」
「サ~~~ラ~~~~!」
「ご、ごめんなさい。どっちも銀色で似てたから」
「ハァァァ、君の信心深さに免じて許すよ・・・」
次の瞬間、満月に照らされた泉が再び光を放つと、女神がもう一度現れた。
唖然とする2人に対し、女神は質問を投げかける。
「あなたたちが落としたのは金の狼男? 銀の狼男? それともこの普通の狼男ですか?」
毛皮の品定めをさせるかのように、ぐったりとした3体の狼男を宙に並べてみせる泉の女神。
フレディとサラは顔を見合わせ、女神の方を向き直すと声を揃えて言った。
「「金の狼男です」」
・
・
・
惨劇の夜が明けても、町は騒然としていた。
無惨に殺された人々の死体が町の至る所にある。
悲鳴と嗚咽と喧騒は、太陽が高く昇っても鳴り止まない。
町中の誰もが不安に囚われていた。
「狼男はどこへ消えたのか? また現れるのか?」。そればかりが人々の関心であった。
町には眠れぬ夜が続いた。
しばらくして、詳細な記憶が薄れるにつれて、あれは毛皮を被った猟奇殺人鬼だったという説が広まり始めた。
そしていつしか、あの夜の出来事は眼前で繰り広げられた殺戮を脳が拒絶したための集団幻覚と定義付けられ、警察署の未解決事件ファイルの中で眠りに付いた。
あの夜が幻では無いことも狼男が女神によって完全に消滅させられたことも、フレディとサラと、残った金の弾丸が知っている。
The End.
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