とあるストーカー

3年前のあの日、カメオはぷかぷか浮いていた。
浜辺のあちこちには「危険、泳ぐの禁止」
とかかれた注意の看板がある。
調べはついていた。この周辺はこの時期、危険な毒クラゲが異常発生する死地なのだ。

これでいい。もう疲れたんだ、ここで死のう。

それで、ぷかぷか浮いていたというわけである。クラゲに刺される事故ならば、自殺も踏ん切りがつく。

そこに、あの女がやってきた。

「好きなんですか？ぷかぷか。私も好きで、いつも来てます」

その女は浮き輪もつけず、本当に気持ちよさそうに浮いていた。

(浮き輪なしでよく…慣れているんだな。ん…？いつも来ている…？毒クラゲは？……くそ、情報も看板もデタラメじゃないか)

かくしてカメオは浜辺に戻った。

(でもこんなに注意書きがあるのに…)

と思い女を見たがやはり気持ちよさそうに浮いている。情報は当てにならないということだろう。カメオは帰宅した。


3年後、カメオは自殺しようとしていた過去が嘘のように力強く生きていた。

「えー本日のニュースです。3人の若者が遊泳禁止の海で泳ぎ毒クラゲにさされて溺れるという事故が起き…」

ふと見たニュースに目を疑った。
「あの場所」だった。時期もちょうど合っている。

驚いたカメオがほうぼう尋ねて回って調査をすると、3年前にも、この場所で命を落とした1人の女がいたらしいことを知った。

名をカメコといった。
カメコの家を訪ねるとカメコの母親は目を大きくし、とある日記を渡してきた。

それは、カメオについて書かれたカメコのストーカー日記であった。写真も沢山あった。


～～～～～～
ずっと影からカメオを見ていたカメコはあの日、誰よりも早くカメオの様子がおかしい事に気が付いた。

危険な海に出ようとするカメオを見て、自殺をしようとしていることを悟った。そして、とっさに自分も海に出た。

泳ぎは苦手だったが、愛の力ゆえか上手く浮くことが出来た。
必死に気持ちよさそうな顔をつくり、頑張って浮いていた。
カメオが浜辺に上がったのを尻目に、ぷかぷか浮いているとカメオと目が合った。良かった。そして、脚に激痛が走った。
～～～～～～～

カメコの日記は、あの日の前日から途絶えていた。
言うまでもない。カメオを助けるために、ぷかぷか常連のふりをして、カメオが諦めて帰るまでそのふりを続けてくれたのだ。
カメオは涙した。しかし、いくら悲しんでももう優しいストーカーは戻っては来なかった。