奇跡1

解答→クリスマスの奇跡により、死ぬはずだった自分が救われ一度は喜んだが、奇跡の代償に母親が失われたことを悟り絶望した


男の子はクリスマスイヴの夜に家族と車に乗っていた。お父さんが運転をし、後ろの席で楽しそうにお母さんと男の子がお喋りをする。「こら、いい加減サンタさんへのお願い何にするか決めないとサンタさんもギリギリだと困っちゃうよ」「うーん、でもまだ決めてない！」「もー」10日も前から尋ねているのにプレゼントをなかなか決めない手のかかる男の子。そんな一家を悲劇が襲う。赤信号を無視して突っ込んできたトラックが、彼らの車を跳ね飛ばした。ぐしゃ。それからというもの、集まった人々による懸命な救助活動。男の子は朦朧とする意識の中、自身の腹部に出来た大きな損傷を見て、子供ながらに助からないことを悟った。あれ、お母さんの声がする。見ると、頬に少し傷があるだけでお母さんは無事らしい。大好きなお母さん。…やっぱり、死にたくない。生きて、もっとお母さんと…「サンタさん、お願い助けて」それが、消えゆく意識の中でとっさに出てきたクリスマスのお願いだった。…次に目を覚ますと、枕の横に、立っている「点滴」が見えた。医者曰く「よくあの事故の中で軽症ですんだものだ」とのこと。腹部を見る。どんな奇跡か、あの大きな傷は消えている。「サンタさんありがとう！！」男の子は喜び、感動で涙した。生きている。「痛ッ…」ふと、男の子は頬の痛みに気がついた。「少し痛いだろうけど、ただのすり傷だから大丈夫だよ」と医者。あれ？そういえばお母さんもここに傷できてたっけ。「あれ？お母さんは？」運命とは残酷なものだ。一つの幸運の裏には一つの悲劇がある。クリスマスの奇跡が死ぬはずの男の子をすくったとしたら、失われたものは何か。とある病室、絶望に呟いた。「サンタさんひどいよ。こんなことなら、僕を殺して。お母さんを返して」しかし、イヴの夜はもう、とっくに過ぎていた。