在りし日の思い出

カメオは着ぐるみアルバイター。
毎日様々な着ぐるみに身を包み、各地のイベントを飛び回る。
中身は冴えないアルバイターでも、着ぐるみを着ればみんなが寄ってきてくれる。
「握手してー！」「写真いいですか？」「暑いのに大変だねぇ、がんばって」
普段の自分じゃ考えられないような言葉をかけられる。
赤ちゃんなんかはびっくりして泣いちゃうこともあるけど。
たくさんの人とふれあえるこの仕事が、カメオは好きだった。

事件は真夏の晴天の下で起こった。
体が急に重くなり、頭痛がする。ありえないほど汗が出る。
やばそうだなと思ったときには遅かった。
ステージ上で倒れるなんてお客さんびっくりしちゃうよなぁ…
司会のお姉さんごめんなさい。
そんなことが頭をよぎったけれどもうどうすることもできない。
スタッフに裏に運ばれ、体を起こせるようになるとカメオは平謝りした。
イベントの主催者は怒っていたけれど、お客さんは心配してくれたり名前を呼んだりしてくれる人が多くいたらしい。

こんな失態はもう犯さない。
喜んでくれる人のためにがんばろう。
そう心に決め、着ぐるみに身を包んだカメオは次の現場に向かうのだった。


（好きなバイトだったのでネタにしてみました。）