奇妙な作詞家

男はいわゆるオタクの類で、アニメやゲーム、漫画、ライトノベルの類を愛好している。その中でも、「アイドルパロ」という、もしも好きなキャラが芸能人だったら…という妄想をするのが大好きだった。そして、それで二次創作をしたいという願望を持ってはいたのだが、男の画力は壊滅的であり、自分でイラストを描く力は全くなかった。

一方男は音楽好きの側面も持っており、現実のアーティストにもなかなか詳しかった。
そこで男は、現実のアーティストを下地にしたアイドルパロをしたいと思いついた。だが、トレスをしようにも画力はないわけだし、何より既存の曲を当てはめるのではパロディ元にされたアーティストに対しても好きなキャラに対しても気が引けると思っていた。
そして捻り出したのが、「アイドルパロのために現実のアーティストをモチーフにしてそれっぽいオリジナル歌詞を書いてしまう」ということだった。「キャラソン」という類のものはご存じだろうか？キャラクター自身がオリジナルソングを歌うというものであり、よくアニメのファングッズとしてリリースされたり、最近ではそもそも歌やアイドルをテーマにした作品もあったりする。男は、それの応用で、二次創作でキャラソンの歌詞を書こうと思ったのだ。
かくして、男はネット作詞家の道を歩み、アイドルパロのために作詞したオリジナル歌詞を次々と小説投稿サイトに投稿していた。ただ、いくらなんでもこうした男の趣味による自作の歌詞を公式が拾ってくれるということはない。そして、男は作曲をする能力はなかったし、する気もなかった。さらに、オリジナル歌詞を他のコンペに応募しようという気も全くなかった。

こうして、歌詞だけはたくさん生み出されるのに、それが歌われることは一切ないという奇妙な状況が起こったのである。

ダンスグループっていいよね。私はその中でも、ラップがあって、しかもそのラップ詞はラップ担当メンバーが実際に書いているのがいいという、ちょっと込み入った趣味の持ち主です。6人時代のKAT-TUNを想像してもらえると分かりやすいかと。
ちなみにですが、男みたいにキャラソン作詞をしてみたいという人、Aメロ→Bメロ→サビの構成をちゃんと作るのと、1番と2番で文字数を合わせる(例えば、1番Aメロの歌詞が4文字+4文字+6文字+6文字構成だったら2番も同じく4文字+4文字+6文字+6文字構成にする)のがコツ。え、なんでそんなに具体的に説明できるのかって？それは、この「男」というのが…。