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美術館に展示されている絵画を専門に盗む大怪盗カメオ。
カメオは美術館から絵画を盗んだ数日後、変装もせずにその美術館に直接出向いて「絵画を盗んだのは私だ」と職員へ直接伝える。
自首をする意図は当然なく、脅迫するわけでもない。美術館に防犯意識を持たせるためにわざと盗んだということも当然ない。
では、カメオは何を考えてそんな行動をとるのだろう?
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カメオには人並外れた二つの技術を持っていた。
一つは怪盗としての盗みの技術。そしてもう一つは絵を模写する技術である。
カメオはお目当ての絵画を盗む時、盗む絵に似せて自ら描いたニセモノの絵画とすりかえておく。最初は発覚を遅らせることが目的であった。しかし今は……。
観客の立場として美術館にやってきたカメオは美術館の責任者を呼んだ。
カメオ「ここの『アルカーノの晩餐』とタイトルで展示されている絵画……これは本当に、『アルカーノの晩餐』という絵画ですか?」
責任者「はい、『アルカーノの晩餐』に間違いございません」
その言葉を聞いたカメオは笑いながらこう言った。
カメオ「絵画を盗んだのは私だ」
きょとんとする責任者。カメオは構うことなく続けた。
カメオ「ここに展示されているのは私が模写して描いたニセモノだ。三日前、本物を盗んだ時にすりかえておいたんだよ」
しばしの沈黙の後、困ったように責任者が口を開いた。
責任者「いやはや、お客様もご冗談がお上手で……!ここに展示されている絵画は正真正銘の『アルカーノの晩餐』です。さぁ見てください、この独特のタッチに大胆な筆使い。間違いなく本物でしょう。これがニセモノだったのであれば、それを見抜けなかった私は転職先を探さねばなりませんねぇ。ふふふ……」
カメオ「……ま、信じるかどうかはお前さん次第だね。じゃあ、失礼するよ……」
美術館から出たカメオはほくそ笑んでいた。
カメオ(いつも通り、まったく気づいていない!すりかえに気付いているが、美術館の名誉のための盗まれたことを隠し通してるという可能性……も、あの様子だとないな。演技ではなく、本気であれが本物の『アルカーノの晩餐』だと思い込んでやがる。クククッ……いつになっても、この快感はたまらないな!)
カメオは盗みの技術以上に、模写の技術に誇りを持っていた。
自分の言った「絵画を盗んだ」という事実が美術館側に承認されなかった事実は、プロの目でも見抜けないレベルで自身の模写の技術が認められたという何よりもの証拠。
それはカメオにとってはある種の承認欲求が満たされる最高の瞬間なのであった。
物語:4票