男は音楽を再生するとき、いつも嫌いな曲から最初に聴くという。いったいなぜ?
※ラテクエ0、まりむうさんのリサイクルです。
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「ただいま。」
「ああ、タケル。お帰りなさい。」
夜遅くに仕事を終えて帰ってきたタケル。
彼の父は昨年の秋に亡くなっており、今は母と2人で暮らしている。
「ごめんね、急に新しい仕事頼まれちゃって遅くなった。晩ご飯、ちゃんと温めて食べた?」
「大丈夫よ。それよりも、タケル。"お父さんのところ"に。」
「あ!そうだった。今やるよ」
「そうだったって…もう。」
はっとして、タケルはライターとスマホを持って、父の仏壇の前へと向かった。
「__父さん、ただいま。」
ロウソクに火をつけ、父の遺影の前に立てる。鈴棒を鳴らして、手を合わせる。
スマホからは、彼の父が大好きだった曲が流れていた。「この方があの人も喜ぶと思うの」と母に言われ、タケル自身も悪くないと思って、毎日これを続けている。
「もうすぐ一年だね。本当に、あっという間に過ぎてくよ。」
__もう、一年。時間は流れるが、父がよく口ずさんでいたこの曲が流れているからか、タケルの脳裏には、未だ父との思い出が鮮明に残っていた。
タケルは考える。これから何年もこれをやり続けて、いずれ、母さんもいなくなったら、その時は、母さんが好きな曲も、流すことになるのだろうか。
どれだけ時間が経って、忘れたくなっても、この曲が忘れさせてくれないだろう。この曲が、僕をあの頃に縛り続けるのだろう。父さんは、もう帰ってこないのに。
あぁ、やっぱり、この曲は好きになれないな。
要約
男は、亡くなった父の仏壇で、父のために、彼が好きだった曲を流すことにしている。
その度に男は亡くなった父との思い出を思い出さずにはいられず、悲しさがこみ上げるために、男はこの曲を好きになれないのだ。
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