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いつもより30分早い朝ごはんを済ませ、今しがた家を出ていった父。
ふとテーブルを見ると、お弁当が置き去りにされている。
お弁当を届けるべく急いで家を飛び出した私が、《隣を歩く父の当たり前の優しさ》に気づいたのは
私の靴下がいとも簡単に濡れてしまったからだ。
では、《隣を歩く父の当たり前の優しさ》とはいったい何だろうか?
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解答
父がいつも私の歩幅に合わせて歩いてくれていたこと。
解説
「あっ、お父さんお弁当忘れてる!」
「あら、本当だわ」
「私、届けてくるね!」
ついさっき家を出ていったばかりの父。きっとすぐに追いつけるはずだ。
私は少し深めのスノーブーツを履いて玄関の扉を開けた。昨夜、一晩中降り続いた雪が辺り一面を真っ白に染め、朝陽がきらきらと反射している。電車が遅延しているといけないからと、父は普段よりかなり早めに家を出たのだ。
深く積もった雪に父の足跡。私はその跡を踏んで追いかけよう、そう思った。しかし二歩、三歩と進んだところで気付く。
父の歩幅はとても広かった。
私の狭い歩幅でそれを辿ることは難しく、すぐにズボリと雪に足を埋めてしまった。ブーツの中に雪が入り込む。
(うぅ~、つめたっ!)
こうなってしまえばもう一緒だ。父の足跡を辿ることは諦め、ズボリ、ズボリと雪の中を進んだ。
「おとうさーーん!!おべんとーー!!!」
「えっ!?あっ!」
私の声に驚いて振り返った父が慌てて引き返してくる。そして私の手からお弁当を受け取ると、その大きな手のひらで頭を撫でてくれた。
「ありがとう、カメコ。慌ててると駄目だなぁ、助かったよ」
「どういたしまして!行ってらっしゃい、お父さん」
大きな背中を見送り、カメコは思う。
いつも当たり前のように父の横顔ばかりを見ていた。
ぴたりと隣を歩くその歩幅は、私に合わせられていたのだ。
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凄く寒いけど、少し暖かい。そんな物語が、ここにあります。