雨の降りしきる晩に、一人の男が家のドアを叩いた。
こんな時間になんだと思ったが、マークスは玄関に向かうことにした。ドアの向こうには暗い色のフードを目深にかぶった、背丈の高い男がいた。
「すみません、私は旅をしているものです。この通り、雨が降ってしまって野営するわけにもいかず、どうか泊めてくださいませんか？」
見ると、随分とびしょ濡れのようだ。
「そうか......ともかくさっさと上がれ。風邪を引くぞ」
「感謝します」
男が家に入ると、マークスは玄関を閉めた。

「身体も冷えているだろう。今、温かいものを用意しよう」
暖炉の火を炊いて男をその前に座らせると、マークスは台所に立った。適当な大きさに切った野菜や肉を鍋に入れていく。
「これはな、雨のスープというんだ......ちょうどこんな雨の日に訪ねてきた客人をもてなすための、特別な料理さ」
マークスは手際よく調理し、ほどなくスープが完成した。大きめのボウルに、たくさんの具をよそってテーブルに置いた。
「さあ、遠慮なく食え。たんと食ったらよく眠れる」
「ありがとうございます。では」

さて、この数日後に男は死んでしまう。なぜか？