不可解なレシピ」のGoodトリック・物語・納得で良かったら1票分。全体評価で特に良かったら3票分Goodができます。
 今日は初めての料理教室なのに、遅刻してしまった。他の生徒とペアになって作るのだから、僕の相方はさぞご立腹だろう。ビルの地下にある教室へ急いで入り、相方の待つ個室へ入る。
 自動ドアが開くと、個室にいた相方は凄い勢いで駆け寄ってきた。険しい表情だ。

「ごめん、遅れちゃって……僕、野尾拓也(のおたくや)。よろしくね」

 相手は僕を無視して踵を返した。部屋の中央にあるキッチンに向かい、そそくさと料理の準備を始める。やはりひどく怒っているようだ。仕方がないので僕も参加する。

 講師などおらず、小さな部屋に二人きり。まともなレシピも用意されず、キッチンの上にメモが置いてあるだけだ。内容を読み上げる。

「小部屋の3つとお酢足したら焼く……? 随分曖昧なレシピだな。誰かに聞いてくるよ」

 自動ドアの前に立つが開かない。力尽くで開けようとしてもびくともしない。まるで閉じ込められているようだ。相方は気にせず黙々と作業を続けている。

「なんでだろう、扉が開かない。とりあえず、このレシピで作るしかないか」

 相方は既にキッチンの上にあった食材をフライパンに乗せ、お酢をかけて焼いている。

「それ、本当に美味しいのかなあ」

一応出来上がった品を、二人とも口に入れる。ひどい味だ。相手も顔をしかめている。

ふと、固く閉ざされていた自動ドアが開いた。相方は結局最後まで何も言わず、去ってしまった。

どうして彼は、最後まで僕と話してくれなかったのだろう……?
19年02月26日 05:15 [ズートピア]
【ウミガメ】
トリック部門
物語部門
納得感部門
良質部門