ここは異世界。
魔法の実力が人間のステータスを決める世界である。
双子姉妹の伝説の大魔法使い、パロムとポロム。
白魔法の開祖、ゴルゴン・リックレイ。
伝説の勇者パーティーの魔法使い、ハイザリン・ズイドウ…
ターナカは息子に彼らのような立派な魔法使いになってほしいと願っていた。
「死者に祝福を、生者に混沌を。足掻き、嘯き、惑い、燻る。黄泉は何処、蜃気楼で誰ぞ嗤う。アム、アッサム、リリル、リリ、んっ… あー、またとちっちゃった!」
魔法学校での授業中、呪文の詠唱で苦戦する息子。
彼が大魔法使いになるにはまだまだ道のりは遠い。
さてこの息子のクラスメイトたちが他のクラスの者たちと比べて成績が優秀なのにはとある理由がある。
その理由とは一体なんだろう?
※要知識問題です
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「あれだなぁ、赤ん坊の寝顔なんざ、いくら見てても見飽きないもんだなぁ」
「もう産まれてから7日、何回同じこと言うんだい」
「赤ん坊、かわいいでちゅねえ。おーよちよち」
「あんた、そろそろ決めないとだよ」
「決めるってなにをだい?」
「名前だよ名前。いつまでも赤ん坊赤ん坊って呼んでたんじゃ、この子の名前が赤ん坊になっちまう」
「つってもお前、誰が名前をつけんだい?」
「そりゃ父親のあんたの仕事ってもんだろ。古今東西、赤ん坊の名前は父親がつけるんだよ」
「この多様性の時代にその考えはどうかとは思うが… 名前かあ、どんな名前がいいかなあ」
「偉大な魔法使いになれるような、立派な名前がいいんじゃないかい?あんたみたいなうだつの上がらない魔法使いになっちまったらこの子も災難だし」
「確かに確かに。でも偉大な魔法使いになれるような名前っつっても全くピンとこねえや」
「三流魔法使いのあんたじゃ底が知れてるわねえ… そうだあんた、司教さんに相談してみたら?」
「さっきからサラッとハラスメントが酷くねえか? うーん司教に聞く、ね。確かにあいつなら学があるし… よし!善は急げだ!さっそく行ってくらあ!」
「ちょっとあんた真夜中に出掛けんじゃあないよ!明日の朝におし!」
「司教!司教はいるかい?」
「ターナカ、こんな早朝に騒がしいね。どうしたんだい?」
「ちょっとあんたに相談してえことがあるんで」
「それはそうと赤ん坊が生まれたそうじゃないか、おめでとうおめでとう。あのクソガキターナカが父親になる日が来るなんてなあ」
「そうそれ!」
「それってどれだい?」
「クソガキだよクソガキ!うちのクソガキに一つ名前を考えてやってはくれねえかな?」
「クソクソうるさいねえ。我が子をクソガキ呼ばわりするんじゃあないよ」
「クソ立派な魔法使いになるような、そんな名前をつけてえんだよ」
「クソに立派もクソもあるかいまったく。んー名前ねえ… そうさねえ、これまでの偉大な魔法使い様の名前を頂戴するのがいいんじゃないか?」
「偉大なる魔法使い様? はて? 例えばどんなだい?」
「伝説の大魔法使いに、パロムとポロムってのがいるな。なんと双子の魔法使いだ」
「ほうほう、パロムとポロム。なかなかいい名じゃないか。他にはないかい?」
「ゴルゴン・リックレイ。こいつぁ白魔法の開祖だな」
「カイソ?ワカメとかこんぶみたいなもんかい?そりゃミネラルが豊富そうでいいや。他にもあるかい?」
「んー、ハイザリン・ズイドウは魔王を討伐した勇者パーティの魔法使いだな」
「ハイザリン・ズイドウ。強そうじゃないか。これもいい。他には?」
「シグマ・ウルマ・フルマ。伝説の龍、バハムートを使役する召喚士さ」
「シグマ・ウルマ・フルマ… 1粒で3度美味しいじゃねえか。他?」
「聞き方が雑だなおい。トゥロー兄弟も第三次魔法大戦で活躍した魔法使いだ。カーネル・トゥローとサマン・トゥローだな」
「カーネル・トゥロー、サマン・トゥローね。はいはい他には?」
「コージー兄弟。この2人は錬金術を極めた魔法使いさ。ヨーブル・コージー、ノーブル・コージー」
「兄弟仲良く魔法使いやってるやつが多いんだなあ。俺もおっかあともう一回頑張ろうかな。ヨーブル・コージー、ノーブル・コージーね。他にもいるかい?」
「遠い昔にハイドハイドハイドって国があって、そこを治めていたのがシューリンガン。そのお妃がグリーンデイ。その子供たちがポンポコピーとポンポコナー。全員が強大な魔力を持った魔法使い一家だった」
「ハイドハイドハイドのシューリンガン…シューリンガンのグリーンデイ… グリーンデイのポンポコピー、ポンポコナー… もう一丁!」
「豆腐じゃねえんだよ。んーあとはチョーク・メイン・チョースキーかな。こいつは魔法武具の開発者で魔法の腕もピカイチだった」
「チョーク・メイン・チョースキーね。他には?」
「他に他にってこれだけあれば十分だろう。わたしも忙しいんだ。そろそろ帰った帰った!」
「おー司教、すまなかったな!参考になった!」
「嫁さんにもよろしくな」
「おっかあ!けえったぞ!」
「おかえりあんた。どうだった?」
「この紙を見ろ!これが名前だ!」
「えーなになに? やたら名前が書いてあるけどこの中から一つ選ぶってことかい?」
「こいつら全員、偉大なる魔法使い様なんだけどよ。せっかく名前をいただくんだ。もう残らず全部赤ん坊の名前にしちまおう」
「全部って、これ全部かい? ちょいとあんた、いくらなんでも長すぎやしないかい?」
「いや、この中のどれかが抜けてたから赤ん坊が立派な魔法使いになれなかった、てなことになったら俺あ死んでも死に切れねえぞ。どれも大事な世界で一つだけの花ってもんだ」
「うーん、世界で一つだけの花ってのはよくわかんないけど、まああんたがそれでいいのなら…」
「よし!決まりだ!こいつの名はパロム、ポロム、ゴルゴン・リックレイ、ハイザリン・ズイドウ、シグマ・ウルマ・フルマ、カーネル・トゥロー、サマン・トゥロー、ヨーブル・コージー、ノーブル・コージー、ハイドハイドハイドのシューリンガン、シューリンガンのグリーンデイ、グリーンデイのポンポコピーのポンポコナーのチョーク・メイン・チョースキーだ!」
「パロム、ポロム、ゴルゴン・リックレイ、ハイザリン・ズイドウ、シグマ・ウルマ・フルマ、カーネル・トゥロー、サマン・トゥロー、ヨーブル・コージー、ノーブル・コージー、ハイドハイドハイドのシューリンガン、シューリンガンのグリーンデイ、グリーンデイのポンポコピーのポンポコナーのチョーク・メイン・チョースキー君、学校行こう!」
「パロム、ポロム、ゴルゴン・リックレイ、ハイザリン・ズイドウ、シグマ・ウルマ・フルマ、カーネル・トゥロー、サマン・トゥロー、ヨーブル・コージー、ノーブル・コージー、ハイドハイドハイドのシューリンガン、シューリンガンのグリーンデイ、グリーンデイのポンポコピーのポンポコナーのチョーク・メイン・チョースキー君、エビの尻尾食べないなら僕もらってもいい?」
「おい!パロム、ポロム、ゴルゴン・リックレイ、ハイザリン・ズイドウ、シグマ・ウルマ・フルマ、カーネル・トゥロー、サマン・トゥロー、ヨーブル・コージー、ノーブル・コージー、ハイドハイドハイドのシューリンガン、シューリンガンのグリーンデイ、グリーンデイのポンポコピーのポンポコナーのチョーク・メイン・チョースキーのくせに生意気だぞ!」
この世界の魔法は長い詠唱を必要とすることが多い。
特に魔法が強力になればなるほど詠唱時間は長くなる。
滑舌が良いことは魔法使いにとってアドバンテージになるのだ。
ターナカの息子の友人たちは常日頃その長い名前を呼んでいるため、自然に滑舌が鍛えられているのだった。
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