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夫の葬式で、カメコは幼い頃に聞いた母の言葉を思い出していた。
そして、その言葉が嘘であったことが嬉しかった。
どういうことだろう?
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【ウミガメ】26年06月10日 21:18

タイトルは小林オニキス『サイハテ』より。

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「それではこれより、廣田アーカード様のご葬儀を始めさせていただきます」
老衰で亡くなった夫を彼の遺言とはいえ、生まれ育ったルーマニア式ではなく日本式の葬儀で送ることがカメコは少し可笑しかった。
思えば、彼との日々は可笑しくてそれでいて幸せだった。
アーカードが吸血鬼だと聞いた時は酷く驚いたものだが、母に子供の頃に聞かされた吸血鬼の伝承を教えると、殆どが事実と違っていて「よく勘違いされるんだ」と頬を膨らませていた若き日の夫の顔を思い出す。
日光や銀に弱いのは吸血鬼が全般的に肌が弱いだけで、流れる水は空を飛べるために泳いだりしないままに一生を終える吸血鬼が多いのだそう。十字架や聖水はそもそも嘘っぱちでキリスト教信者は多いらしく、鏡にも普通に写るし、挙句鼻がいいだけでニンニクの好き嫌いは個人差だそうでアーカードに至ってはニンニクを効かせたペペロンチーノやオニオングラタンスープが大好物だった。杭に関しては「そんなことされたら、人間だって死ぬだろ!?」と言っていたっけ。
食事として輸血パックを貰っていたためにたまに気味悪がられていたけど、アーカードは優しくて茶目っ気があって少しおっちょこちょいで、最高の夫だった。
ふと、母との幼い頃の会話を思い出す。
『吸血鬼ってね、不老不死なんだって』
『ふろうふし?』
『歳をとることも死ぬこともないの。胸を杭で貫かれないと死なないんだって』
『ふーん。じゃあ、ドラキュラさんとは結婚できないね』
『え? なんで?』
『だって、人間って長くても百年くらいしか生きられないもん。ドラキュラさんを残して死んじゃうのは可哀想だよ』
それを思い出して、つい涙が零れた。
あの伝承が嘘でよかった。あれが本当だったら、私に「僕には君だけしかいないんだ。生涯君だけを愛すると誓うよ」と優しく笑ってくれた彼を、永い孤独と悲しみで苦しませるところだった。
涙を拭いて、穏やかな表情の遺影に視線を向ける。
安心してください。すぐとは言わないけど、そう遠くないうちにそちらに行きますから。そしたら、貴方の好きなペペロンチーノを沢山作ってあげますから。

A.
吸血鬼伝承の「吸血鬼は不老不死である」が嘘で、吸血鬼である夫が自分の死後に永い悲しみに苦しまずに済んだから。
物語:1票
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ほずみ[◇カカ王◇]>>コメントなし
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