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息子同様に可愛がってきた愛馬(オス)が駆け寄ってきたので、心配していた男は深く絶望した。なぜ?
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▽解説
時は戦国、陣中の海野亀政は気を揉んでいた。
ともに幾多の戦場を駆けた愛馬鶴亀号を託し、跡取り息子の亀繁を前線に送り出したからだ。
戦況は思わしくなく、長きに渡り家を支えた老将たちが合戦場の露と消えた。こうした今も、次々と負傷兵が陣中に運ばれてくる。
亀政は不安とともに「鶴亀号なら難局を切り抜けてくれるはず」と信じていた。
鶴亀号は判断に優れる賢馬で、亀政自身も鶴亀号の機敏さに何度も命を救われてきた。
だからこそ、先鋒を務める亀繁を護ってくれると信じ、鶴亀号にその命を預けたのだ。
満月が南の空に昇った頃、月明かりとともに見慣れた芦毛の馬が陣中に駆け込んできた。
「鶴亀号だ。」
亀政は陣を飛び出して愛馬を迎えようとしたが、すぐに違和感に気づいた。
「亀繁が、乗っていない・・・。」
芦毛の鶴亀号は亀政のそばで脚を止めた。
黒く大きな瞳が悲しげに、申し訳なさげに月を映した。
続いて伝令の若い兵が飛び込み、こう告げた。
「報告、報告にござりまする。
海野亀繁殿、羅手峠にて先刻、討ち死になさりました。」
▽解説の解説
時は戦国時代、男は戦場に向かう息子に優秀な愛馬を託した。
優秀な愛馬なら息子を守ってくれると信じていたからだ。
しかし、愛馬は息子を乗せずに陣中に帰って来た。
男は息子が討ち死にして落馬し、馬だけが戻って来たと悟り、絶望した。