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夏。
久々に車を出した父に、遊園地に連れていってもらった4歳の哲平。
店売りのお菓子や大好きなジェットコースターを堪能し、閉園時間まで遊んでから二人は遊園地をあとにした。

さて、その夜。
哲平が歓喜の声を上げる直前、父が泣きながら見ていた窓の外の景色はどんなものだろう?
[らりぷす]

【ウミガメ】25年12月01日 20:42
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車は暴走する猪のように速度を上げ、踊るように崖から海に向かって突っ込んで行った。
唸る鉄塊は一瞬だけ空を駆けた後、項垂れるように落ちていく。


「わあああああああ!!!」


哲平は先刻堪能したジェットコースターを思い出し、スピードと浮遊感に無邪気な歓声を上げた。
父は迫る海面を前にして、咄嗟に強く目を閉じる。

直後、爆ぜるような着水の衝撃が車全体に響いた。

哲平の父が目を開くと、予想していた終わりは無く、2人を乗せた車両は静かに暗い海に浮かんでいた。
隣を見ると、哲平は先ほどの歓喜の叫びが嘘のように眠っている。正確に言えば、着水の衝撃で気絶したのだろう。

父親はほっと胸を撫で下ろしていた。

リストラに遭った。妻には逃げられた。
もはや愛する息子のためにすら、生きていく気力は無かった。
だから最後に、夏休み中の息子に遊園地の楽しい思い出をプレゼントして、二人で死のうと思ったのだ。

飛び込む直前、フロントガラスの外に迫る海を見て、泣きながら謝った事を思い出す。
あのときは確かに死ぬ決意があったのに、今は生き残ったことに安堵している。矛盾だった。

父が自身の弱さを責める中、ふとした異変に気づいた。

車両が、傾いている。

当たり前のことだった。車はいつまでも水上に浮かんでいられない。

脱出を試みたが、すでに水圧により封じられたドアはびくりともしなかった。
そのまま傾いた車両は海中に向かっていく。
フロントガラスが黒い水中を全面に映し出した時には、すでに父親は抵抗を止めていた。

隣を見ると、まだ哲平は眠っている。

死を覚悟する中、父は呟いた。




「────哲平は寝てる間で、良かったなぁ」





簡易解説

人生に絶望した父親は、最後に哲平に遊園地での楽しい思い出を与えた後、その帰りに車で海に突っ込んで心中しようとした。
アクセルを踏む直前、父はフロントガラス(=窓の外)に広がる崖下の海を見ながら、泣きながら哲平に謝った。
投げ出された車の浮遊感にジェットコースターに似た楽しさを見いだし喜ぶ4歳の哲平は、最期まで何も知らないままだった。
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crc-556>>コメントなし
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sahara>>コメントなし
あおいみこ>>コメントなし
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日勉L(転生)>>コメントなし
ほずみ[ますか?]>>コメントなし
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