ESCAPE それは最適解のはずだった」のGoodトリック・物語・納得で良かったら1票分。全体評価で特に良かったら3票分Goodができます。
愚かな権力者たちによって引き起こされた核戦争によって、消滅寸前となってしまった地球。
生き残った人類ほぼ全員を乗せて飛び立った大型宇宙船に
乗り損ねてしまった哀れな親子が、静まり返った砂漠を駆けていた。

「もうワテはダメじゃ! ここから先は1人で行ってくれマミ…」
何言ってる! 走るんだよ! まっすぐ走るしかないのよ!
極限状態の中、叫び声を上げる娘に手を引かれて砂漠を駆け続け、ついに辿り着いた先で、
アキラは安堵と絶望の両方に襲われ、疲れ切っているはずの体でその場に立ち尽くした。
地球脱出を信じ15時間走り続けた2人が目の当たりにしたのは、
1人乗り用の脱出艇1基だけがスタンバイしている光景だった。

1基しか残ってないじゃない! 政府に騙されたんだわ!
泣き叫ぶ娘の声を聞きながら、アキラは呼吸の乱れを強引に整え、改めて小さく息を吐いた。
「もう、ワテら2人共が生き延びるのは無理なようじゃなぁ…。
すまないのぉ、マミィ…。ワテが…、ワテが足手まといにならなければ、
今頃大型宇宙船に乗って、地球におさらばできていたというのに…」

呻き声を漏らしてしゃがみ込み、傷の残る脚を押さえるアキラ。
「でも、ワテの軍人経験、知識と腕力がなければ、アンタとワテ2人一緒でなければ、
この場所までたどり着けなかったじゃろうから、それはトントンという事にしてもらってええかのぉ。
ワテはここまで一緒に来れて、地球を脱出するアンタを見送ることができて、大満足じゃわい。
こうなったのは全てワテの責任。死ぬべきはワテ、生きるべきはアンタじゃよ…。」

ほんと そのとおりね、という声が、砂漠に響いた5分後。


アキラは、窓の向こう側で 虚ろな目を浮かべて砂の上に立つ娘に対し、
脱出艇の中から手を振っていた。

どういうことか。
25年11月23日 14:40 [油獣]
【ウミガメ】
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