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「一本当たり」

購入したアイスが当たりだった。

そのアイスの当たり棒を中年男性の死体の手に握らせた女。

一体なぜ?
[ダニー]

【ウミガメ】25年01月24日 21:54
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父が亡くなった。

急性心不全だった。

無口な父親だった。

一緒に居ても会話が弾むことはない。
だから父と二人きりで過ごす時間は少し居心地が悪かった。

怒られた記憶も褒められた記憶もない。

写真嫌いだったから父と写る写真もほとんどない。

だから父の訃報を聞いた時、悲しいという感情はあまり湧いてこなかった。

ただ淡々と。母と葬式の準備を進めている。

「これなんやろか?」

母が父の書斎の箪笥の中から何かを見つけてきた。
父のイメージとはそぐわないファンシーなデザインの缶。
どうやらクッキーが入っていた缶のようだ。
中にはアイスの棒が一本と何かが書かれた紙切れ。

「おたんじょうび、おめでとう」

幼く拙い字。私が書いたものだ。

ふと当時の記憶が蘇る。

私が小学生の時に初めて父にあげた誕生日プレゼント。
父が当時好きだったアイス。

よく見るとそのアイスの棒には「当たり」と書いてあった。

父はその当たり棒を交換することもなく、ゴミとして捨てることもなく、私からプレゼントとして大事に保管していたのだった。

この事実を知っても私に悲しみは湧いてこなかった。

ただ、私は父に確かに愛されていたのだなと感じて、なんだかホッとしたような気持ちになった。


その翌々日の葬式の日。

父のなきがらが火葬場へと運ばれる。

私は棺の中の父の手にアイスの棒を握らせた。
父の想いを唯一感じられるもの。
だがそれは父にとっても同じだろう。
これは父に持っていてほしい。

棺は焼却炉に飲まれていく。
そこでようやく私の頬に一筋の涙が落ちた。
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