A、イケメン王子ダダダダが王子じゃなくなってしまったから。
────昔々、大変美しい姫君がいた。
だが、ある時森に迷い込んだ姫の美貌を妬んだ魔女に呪いをかけられ、姫はカエルに変えられてしまう。
だが王子のキスで呪いは解け、2人は結ばれた。
そうしていつしか彼らは森の傍らに国を建て、最初の王と王妃になった。
後の、ラテライツ王国である。
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さて、随分と長い時が経った今も上記の伝説は国民たちに広く知られており、魔女キヨウルの噂も未だ健在である。
今でも近隣の森には魔女が住んでおり、美しく若い女に呪いをかけてしまう。呪いを解くには、王子のキスしかないのだと。
しばしば、森でキヨウルに会ったと主張する者も存在するが確たる証拠もなく、あくまで伝説、噂話の域を出ないというのが多くの国民の認識…「だった」。
近年になって、「キヨウルに呪いをかけられた」という女性が数多く現れるようになった。
一体なぜか。
それは現国王の長子、
王子ダダダダが原因である。
王子ダダダダは眉目秀麗なハンサムボーイ。国中の女性は皆、彼にメロメロである。
まだ彼に伴侶はいない。ワンチャンあるなんてことを言う気はないが、あわよくば彼と懇ろになりたい女性は多い。
そんな女性達は、そのうちあることを思い付いた。
「建国の伝承と魔女キヨウルの噂に便乗したら、王子にキスしてもらえるのでは?」…と。
要は魔女の呪いにかかったような振る舞いをして、それを解くためという名目で王子にキスしてもらおうという魂胆だ。
最初の最初こそ1日に多くて2、3人であったため、憐れに思った王子も真剣に話を聞いていた。しかし、そのうち話が人伝いに拡がってしまった結果、キスを求めて城に来る女性の数は爆発的に増えた。ここらで流石の王子もおかしいなと思ったらしい。
そうして女性たちはよくキヨウルの伝承を語るようになり、その呪いの被害を騙るようになった。
とはいえ、伝承通りカエルに変身したふりなど出来る筈もない。困った女性たちは、自分たちの演技でなんとかなる範囲で不調を騙り、キヨウルの呪いのせいということにすることにした。
「森から帰って来てからお熱が出て…お医者様も原因がわからないというのです…これはきっと
魔女の呪いですわ!」
「お願いです…娘が記憶喪失になってしまい、母である私のことがわからないのです…!あの森に入ってからです…これはきっとかの
魔女の呪い…」
「フハハハハーー!私は
魔女の呪いでこの女に取り憑いた悪魔だーーーっ!私を祓うには王子のキスしかないぞーーーっ!」
こんなのが毎日城の前に山ほどやってくる。
近隣の森を立ち入れないようにしようかと考えたが、王国は資源の多くを近隣の森の自然から賄っており、誰も立ち入れないようにしてしまっては国営がままならなくなってしまう。
すっかり困り果てていた、王子をはじめとする王家の人間たち。
だがそんな中、持病の悪化を理由に現国王が退位。
長子であるダダダダが父の王位を継承し、新しく国王の座につくこととなった。
このニュースは瞬く間に国中を駆け巡り、ラテライツの女性たちは大いに悲しんだ。
王になってしまったのである。
ダダダダには、「キスしても王子ではないから呪いが解けない」という大義名分ができてしまった。
当然、呪いを口実にキスを要求してももう意味がない。
徐々に伝承に便乗する者は減り、城までキスを要求しに来ることはなくなっていった。
こうして、魔女キヨウルの被害を訴える人は殆どいなくなったのだった。
ダダダダ王の即位から十数年後。
今となっては魔女キヨウルは、以前までと同じ「伝承の中の存在」という認識に戻った。魔女の話は殆どの国民が知っているものの、実在を信じている人はごく少数である。
それでもやっぱり、森で迷った際に魔女キヨウルに会ったと主張する人がごくたまに現れる。
ひょっとすると近隣の森では本当に、キヨウルがひっそりと暮らしているのかもしれない。
ストーリーと解説 : 器用
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