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昔昔のある日。
巨大な黒雲がらてらて村をすっぽりと覆い、村始まって以来の大雨が村を襲った。
村人曰く「雨神様が盥をひっくり返しなさった」ような、滝のごとき大雨である。
幸いにして、村には然程深刻な被害はなかった。
ただ、奇妙なことがひとつあったのだ。
雨が上がってみると、村から或る物が全て忽然と姿を消していたのである。
今にして思えば、と村の人間達は口々に言った。
「なにか光るものが、地上から天空に吸い込まれるように、次々と雨の中を移動して行った。それはそれは神々しい眺めであった」と…

これが、らてらて村に古くから伝わる、「大雨の日に好いた者のこと想えば恋愛は成就する」という迷信の由来となったお話なのだが、さて、或る物とは何か?
23年06月05日 09:53 [きまぐれ夫人]
【20の扉】
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