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「〇〇番、来い」

ついにこの時が来たのだ。
俺はかつて重大な殺人事件を起こしてしまい、死刑を宣告された者である。
いつかこの時が来ると覚悟していたが、いざその日になると死ぬのが怖くなってくる。
今まで恐怖というものを全く感じてこなかった俺でさえも感じるのだから、普通の人が何も恐怖を感じないことがあるはずがない。

「ここが教誨室だ。今から1時間後に刑が執行される。それまでこの部屋で教誨師の方とお話しても良いし、ここにあるものを食べても良い。とにかく今までのお前の人生を振り返りながら、人生最後の充実した自由時間を過ごしてくれ」

刑務官は俺の人生を振り返れと言っていたが、この40年ちょっとの俺の人生に価値などあるはずがない。
そう思っていたが、いざ思い出してみると、さまざまな記憶が蘇ってきた。

父は俺が赤ちゃんの頃に病死して、母親1人に育てられた。今思うと、母親には苦労ばかりさせてしまった。だから俺が大人になったら親孝行しなければと思っていたのに、なんで父の後を追って逝ってしまうんだよ。

小中高と友人関係に恵まれ、就職後も職場の同僚に恵まれた。今では小中高の友人とは疎遠になってしまったが、職場の同僚は今も私の数少ない友人と言える。その中には私の元妻もいる。子供が生まれた時が俺の人生のピークだった。数年前に仕事で失敗し、金を失い、妻と子にも逃げられた。同僚たちも応援してくれてはいたが、期待に応えられず、そこから借金が膨らんでいくだけの日々が始まった。もう限界だった。金のために強盗と殺人を繰り返すことしか考えられなかった。

こうして振り返ってみると、俺の人生はまだやるべきことがたくさん残されている気がしてきた。ついこの間まで死んでもいいと思っていたが、死にたくないという考えが頭の中を回り始めていた。亡くなってしまった両親に親孝行を何もできなかったこと、疎遠になってしまった小中高の友人にその後声をかけられなかったこと、妻と添い遂げられなかったこと、子の成長を見届けられなかったこと、同僚たちの期待に応えられなかったこと。

後悔の念に駆られつつ、最後に何かこの運命に逆らうことはできないかという考えが俺の頭をよぎった。
そう……最期に……。

俺は大粒の涙を流しながら舌を噛み切った。


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問:上記の文章中の「俺」にはとある大好物があるのだが、それが何かを答えてほしい。
23年04月29日 21:32 [ぎんがけい]
【20の扉】【闇スープ】
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