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1週間後に隕石が落ちて、地球は滅亡するらしい。
私は寝ぼけた頭で、国営放送のニュース番組でそんな冗談を言うのはナンセンスだと思ったが、どうやら本当らしい。どのチャンネルも悲壮感漂う顔したアナウンサーが同じことを伝えるか、もしくは誰も何も伝えていないかの二択だった。なるほど、この状況であれば仕事を放棄するのは正しい。

私も今日は学校をサボることにして、スウェットのままでふらりと外に出て見ると、私の住む小さな町もパニックに陥っていた。あちこちから泣き声や叫び声が聞こえたし、なぜか道路は酷く混み合っていた。
道沿いの家の駐車場で荷物を車に詰め込む家族を見て、ああこの人たちは逃げるつもりなのか、と察する。地球が滅亡するのに、どこに逃げるのだろう。



***



地球が滅びるその日の朝、私は制服に着替えて学校に向かった。

町は1週間前とは打って変わって静かで、すれ違う人もほとんどいなかった。たまにすれ違っても私のことなんか視界の隅にも入っていなさそうだ。
呑気に歩いていると、少し離れた場所にいるおじさんが、私を見て怪訝そうな顔をしているのに気づいた。近所の吉田さんだ。曖昧な笑みを返して足早にその場を去った。


学校に着いた。やはりと言うべきか、人の気配はない。正面玄関は締まっていたが、合鍵を使って裏口から校舎に入った。
靴を履いたまま廊下を歩いて3年5組の教室を目指す。自分の足音だけが妙に響いた。部活だ休日出勤だ何だと、常に誰かがいるこの校舎に、誰もいないことを実感して胸が高鳴った。

通い慣れた3年5組の教室に入り、窓際の一番後ろの席に座った。引き出しに手を入れると、「向島」と名前が書かれた教科書が詰まっていた。意味もなくパラパラと教科書を捲ってみる。

ああ、今日で終わりなんだ。ぼんやりと考える。
今日の夜、日付が変わる少し前に隕石が落ちて、地球そのものが丸ごと吹き飛んでしまうらしい。……悪くない。
悪くない人生だった。

心残りが、あるとすれば、



***



私は絶望し、彼は期待した。

なぜ?
18年09月07日 21:00 [ちるこ]
【ウミガメ】
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