思い出は必ずしも美しいとは限らない」のGoodトリック・物語・納得で良かったら1票分。全体評価で特に良かったら3票分Goodができます。
夫との初めてのデートは、美術館。
もうウン十年前、あれは秋の匂いがし始めた頃。

普段は寡黙な彼が、その日はいつになく饒舌で随分はしゃいでいるように見えた。
美術館を出た後に入った純喫茶(!)で向かい合わせに座り、いろんな話をした。
憶えているのは季節ごとの匂いの話。私は四季それぞれが始まる匂いを感じとることができる。ある日突然、あ、春が来た、と鼻が知るのだ。
「敏感なのかな。なんの役にも立たないけどね」
そんなことを話すと彼は「へぇ…」と驚いた顔をし、恥ずかしそうに笑った。

次のデートから、彼は(私の好きな)普段通りの寡黙な人になった。
二人並んで黙って歩くのが、私にはとても心地良かった。
喋らなくても、彼が楽しそうにしていたから。


今、私がその初めてのデートの話をすると、夫は苦笑いをして話題を変えてしまう。彼にとっては触れて欲しくない思い出なのだ(笑) 
なぜだかわかりますか?
21年10月02日 00:00 [きまぐれ夫人]
【ウミガメ】
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