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先日、俺は奇妙な話を聞いた。
それは高校の演劇部の同窓で食事会をしていた時のこと。参加者の一人である「浦田」という男からだ。
俺の学校の演劇部は本格的にプロを目指すいわゆる「ガチ勢」が集まる部活だったのだが、俳優志望の例に漏れず将来性への不安やライバルとの競争の激しさから、みんな芸能界の扉を叩くことすら許されないままドロップアウトしていってしまった。結局、演劇部の中では才能も無ければやる気もほどほどだった浦田だけが俳優としてそこそこうまくやっているというのだから世の中分からないものである。そんな風にたった一人だけ芸能界にいる浦田は同期のヒーローであり、飲み会に行くといろいろと業界の裏話もしてくれそれがまた酒の肴にもなっている。
さて、そんな浦田の周辺で最近オカルトな騒ぎが起こっているのことだった。ぜひ詳しく聞きたかったが、その時は別の話題に流されてしまった。そこで後日浦田をサシで食事に誘い、話を聞いてみることにした。

浦田の話はこうだ。

浦田の俳優仲間で友人である亀山という男は数か月前からストーカーに悩まされていた。最初は亀山のSNS公式アカウントに奇妙な動画が届いていたようだったのだが、芸能人のアカウントにこの手のスパムや荒らしが現れることは珍しくなく、またアカウントは事務所管理であり亀山本人が見ることもないので特に気にも留めていなかった。ところがそのうち亀山の自宅に手紙が届き始め、ようやく自分がストーカーされていることに気付いたのだった。そんなある日、亀山が浦田に謎の人形の写真と「がちやばい」「くる」とメッセージを送り、その翌日、亀山が本人も勝負をかけていたはずの大事なドラマの仕事を飛ばし、それ以降連絡が取れていない。事務所や浦田は警察に届けたが、あまり進展はないようだ。

どうやら思ったよりも事態は深刻なようだ。警察も関わっている案件だし軽々しく首を突っ込むべきではなかったと反省していると、突然浦田が「そうだ!これ記事にしてみればどう?」と言い出した。
確かに俺は大学の方の演劇部のつてで今は芸能誌のライターをしているが、自分がやっている雑誌はアーティストの新譜情報をまとめたりインタビューに行ったりするのが主で、この手のゴシップは専門ではない。が、浦田は「いいじゃないの、なんのかんの読者にも食いつきいいんだから。それにお前も興味あるみたいだし。任せた」と強引に押し付けてしまった。
仕方ない。確かに踏み込んだのはこちらだし、この釈然としない気持ちを解消したい思いもある。今回調べるポイントは二つ。「この人形の正体は何か?」と「亀山はどうしていなくなったのか?」だ。早速今日から調査と取材を開始することにする。

・「俺」の一人称視点で進みます。質問欄は「俺」がどうしたかと一人称で!
・亀夫君問題です。登場人物は知らないことがあったり、本筋と関係のない話をしたりすることがあります。また、答えたくない質問には嘘をついたり、はぐらかしたりすることもあります。
・分からなくなったら「編集長」に訊いてみれば、何かいいアイデアをもらえるかも?
21年09月26日 16:00 [KY太郎]
【亀夫問題】
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