先月から付き合い始めた人生初の彼氏のために、バレンタインチョコを手作りすることにした加奈。
彼氏の喜ぶ姿を思い浮かべながら作ったチョコレートは、試しに一つ口に入れると甘く蕩けて。ラッピングも我ながら上出来! とご満悦。
ところがバレンタイン当日、彼氏が他の女子から告白されている現場を目撃してしまったせいで加奈は、下校中に突然降り出した雨の中、ラッピングの曲がったチョコレートを彼氏に渡すことになった。
状況を補完してください。
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◆簡易解説:
加奈にしては良くできた方だが、ラッピングが曲がってしまっている手作りチョコレート。
他の女子の高い出来栄えのラッピングを見て、加奈は彼氏にチョコを渡すのが怖くなってしまった。
チョコを渡せぬまま、彼氏と一緒の帰り道で突然の雨。折り畳み傘を取り出そうとカバンを開けたせいでチョコの存在が彼氏にバレてしまう。
観念して加奈はチョコを渡すことになった。
・・・
「先輩、好きです! バレンタインチョコ、受け取って下さい!」
「気持ちは嬉しいけど、ごめん。俺、彼女いるんだ」
「そ、そんな……。でもっ、チョコだけでも受け取ってくれると嬉しいです!」
「……そっか。じゃあ、貰うよ。ありがとう」
先月から付き合い始めた彼氏が告白されている現場を目撃して、私は愕然とした。
彼氏のことをカッコいいと思う女の子が自分だけだなんて思っちゃいない。
私と彼氏が付き合い出したのは先月からだから、知らない子がいるのもムリはない。
彼氏が私以外の女子から本命チョコを受け取るのも、告白を断った上でのことだから怒ってなんかいない。
私が愕然としたのは、彼氏が受け取ったチョコのラッピングのクオリティにだ。
……何が我ながら上出来!だ。 自分のカバンの中にある歪んだラッピングをされた箱を見て、急に自分が惨めに思えてくる。
あの子のチョコと見比べられたら……いや、見比べるまでもなくこんなチョコを渡したら幻滅されて、彼氏にフラれてしまうんじゃないだろうか……。
宝物のように大切に得意気に持って来たチョコが、今では誰かに見られたらお終いな爆弾に思えて。
結局、彼氏に渡せぬまま放課後になって。
一緒に帰る道中で彼氏におずおずとバレンタインの話をされても、「あー、ゴメン! バレンタインのことすっかり忘れてた!」なんて見え透いた嘘ついて。更に惨めだ。
そんな時、突然の雨。 最悪だ、なんて嘆く余裕もないぐらいの寒くて冷たい雨で。
急いで雨宿りできる軒下に入り、カバンの中から傘を探す。
「確か折りたたみ傘が……」
「ねえ。それ、チョコじゃない?」
「あっ……」
やってしまった……。一番見られたくない人に見られてしまった。しかも最低なウソをついた後に。
「それって、友達から貰った……んじゃないよな? 俺に、くれないの?」
最早言い逃れはできない。観念した私はカバンの中から手作りチョコを取り出して彼氏にそっと見せた。
「私不器用だし今までこんなことしたことなかったから、ラッピングがグチャグチャで……」
「自分でラッピングしたの? スゲェじゃん! 全然変じゃないよ! それに、俺のためにしてくれたなんて、めちゃめちゃ嬉しい」
「ホント? だってお昼に貰ってたチョコ、凄く綺麗で……」
「それで俺に渡すのやめようとしたわけ? こっちからしたら、彼女にチョコ貰えないって凄くショックだったんだからな?」
「ご、ゴメン」
自分勝手に思い込んで、彼氏の気持ちを全然分かっていなかった。自分が嫌われたらどうしようと思ってばかりで、彼氏を傷付けてしまっていた。
ああ、これこそ彼女失格だ……。
「そんなに俺のために一生懸命になってくれたんだ。嬉しい」
「ゴメンね……」
「怒ってないよ。めっちゃ嬉しい」
私が俯いていた顔をそっと上げたら、本当に嬉しそうな彼氏の笑顔を夕焼けが照らしていて。眩しいけれど目を逸らせなくて。
冷たい雨は、とうに止んでいた。
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