「夢ならどれほどよかったか」のGoodトリック・物語・納得で良かったら1票分。全体評価で特に良かったら3票分Goodができます。
一世一代の賭けに勝ったカメオ。
ある日、その余韻に浸りながら眠ると、自分が殺される夢を見た。
まごうことなき悪夢だった。
まさに殺される瞬間にベットから飛び起きたカメオ。
彼は夢と解ると一旦は安堵したものの、やがて猛烈な不安に襲われた。
一体どうしてだろう?
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心臓移植したカメオは、勝ち誇っていた。
カメオは生まれながらの疾患で、心臓の移植が必要だった。
しかし、都合よく自身に適合するだろうドナーが現れるのは、かなり確率が低かった。
だからカメオは、心優しい弟のウミオを事故に見せかけて殺し、彼の心臓を移植できないかと考えたのだ。
長い間考え、事故に装ってウミオを脳死状態にするトリックを思いついたカメオ。
実際に脳死状態になるのか。そして殺人だとバレないか。最後に、本当に自分に適合するのか。
このあたりは、賭けだった。
最後は昔検査して適合するだろうと言われたので大丈夫だと思うが、最初の二つが厄介だった。
しかし、自分にはもう時間が残されていなかった。
だからカメオは長い間考えていた案を実行に移しーーーそして、賭けに勝ったのだ。
警察も最初は事故ではない線でも疑っていたようだが、そこは入念な計画が功をそうした。
心優しいウミオを手にかけるのは心が痛んだが、それでも自分が生きるためだった。
しょうがなかったのだ。
カメオはほんの少しの罪悪感と、そして一世一代の賭けに勝利した余韻に浸りながら、眠りについた。
その夜、カメオは夢を見た。
それは自分が殺される夢だった。
殺される瞬間、確かに殺人者の顔を見た。
それは紛れもなく、カメオ本人だった。
はっ、と夢から覚め、カメオは布団から飛び起きた。
汗が背中からびっしりと滴っていた。
その光景は、間違いなくあの時のものだった。
ただ一つ違ったのは、その光景が自分の視点からではなく、ウミオの視点からのものだったのだ。
あれは、ウミオの記憶なのだとカメオは悟った。
殺される瞬間の、記憶ーーー。
話に聞いたことがある。
臓器移植を受けた患者が、そのドナーの記憶を継承するというものだ。
たしか、記憶転移、といったか。
カメオは今見た夢を反芻しながら、ふっと笑った。
流石に、実際の犯行の様子をそのまま伝えられるのはまずい。
トリックもバレ、証拠も抑えられる可能性がぐっとたかくなるだろう。
しかし、ウミオも不幸なものだ。
死んでまで、自分が殺されたのを誰かに伝えたかったのだろうが。
まさに伝える相手を間違えたな。
自分以外のだれかに先ほどの光景を伝えていたならば、警察は動いただろうかーーー
そこまで考えて、カメオはまさに全身から血の気が引くのがわかった。
ウミオは、心優しいやつだった。
万が一自分が死んだらと、ドナーの登録をしていたのだ。
そしてそれは、心臓だけじゃなく、全身ーーー。
あの頃の自分は心臓にしか興味がなかったから気にも留めなかったが、
つまり、自分以外にもウミオの体を持つ人物が、この世のどこかにいる、もしくは今後現れるのだ。
あの記憶が、自分以外に流れれば…‥。
カメオは猛烈な不安に襲われた。
カメオは、ウミオの叫びが、すぐそこまで追いかけてきているような気がしたーーー。
物語:4票納得:1票良質:6票
全体評価で良質部門
まろゑ>>
ベールこそ分厚いものの、言葉のあやに頼らない問題構成、オカルトめいた要素を含みながらもロジカルに推理可能な構成と、質の高い水平思考ゲームだと感じました。