ある男が、とある海の見えるレストランで「ウミガメのスープ」を注文しました。
しかし、彼はその「ウミガメのスープ」を一口飲んだところで止め、シェフを呼びました。
「すみません。これは本当にウミガメのスープですか?」
「はい・・・ ウミガメのスープに間違いございません。」
勘定を済ませ、帰宅した後、カメオは崖から落ちて死んでしまいました。
何故でしょう?
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解説
「本当にすまんな、こんなところに呼び出して」
開口一番、亀助はそう言った。
崖の前に立つ男、カメオは、いえ、といいながら首を横に振って答えた。
海の見える崖だった。しかし周囲に人はおらず、二人の話し声の他は潮風がさあと吹く音しかしなかった。
「いいんです、お義父さん。あんな事故があった後でも・・・海は好きですから」
カメオは少し前、カメスケの娘であり、カメオの嫁であるカメコとクルージングに出て、海難事故にあった。
そして、生き残ったのは、カメオだけだった。
カメコは、遭難の際に海に投げ出されたとカメオは言った。
「それで、大事な用事って何ですか?」
「ウミガメのスープを飲んだ」
空気が、固まる。
カメオの動きが止まり、崖の方を向く。その表情は亀助からは見えない。
亀助は続けて、ゆっくりと言った。
「お前の、言っていた味とは、全く違った。180度な」
カメオは海難事故で長い間遭難していた。そして救われた際、彼はこう言ったのだ
『偶然獲れたウミガメをスープにして食べて、それで生き残った』と。
その時に、亀助はカメオの語るウミガメのスープの味を聞いていたのだが、『全くと言っていいほど聞いていた味と異なっていた』のだ。
少しの違いなら違和感はなかったかもしれない。
しかし、全く真逆の味だとなると話は変わってくる。
実は亀助はその前から、ある仮説を持っていた。
そして、ウミガメのスープを飲んで、その仮説は確信に変わっていた。
「カメオ、お前は、『何を食べたんだ』・・・?」
それは、もはや質問ではない。
確認と、言い訳の機会を与えたに過ぎない
カメオはウミガメを食べていない。
じゃあ、彼は『何を』食べていたのか?
本当に、カメコは海に投げ出されたのか?
・・・『投げ出した』、いや、『投げ捨てた』のではないか?
証拠隠滅のために。
「・・・ははは」
不意に、カメオから、笑い声が漏れる。そして続けて呟いた
「そうか。・・・『似ていた』のか。・・・つい、真逆の味を答えちまった」
「なぜだ! なぜカメコを食った!いや、なぜ捨てた! それに、なぜ嘘を!」
食べた方の理由は説明がつく。
彼も、生きるためには、そうするしかなかったのだろう。
緊急避難、というやつだ。
「なぜって」
カメオは振り返って、不思議そうに言った
「考えてみてくださいよ、お義父さん。私のやったことは緊急避難だ。罪にはならないかもしれない。でもね、周りはどう思いますか? 人を食った私を、受け入れてくれますか? 私にも友人関係があって、職場での人間関係がある」
そうだ。
食べたことは罪にはならないかもしれない。しかし周囲はどう思うだろうか。
仕方ないとはいえ人を食べたカメオを、どう思うだろうか。
「ええ、私は食べましたよ、死んだカメコをね。しょうがなかった。生きるためにはそうするしか。しかし、食べたことがバレれば、俺はどのみちおしまいだ。どうせ周りは受け入れてくれない。だから・・・」
「隠したのか」
「そうです! 死体さえなければ、だれも証明できない。真実は猫箱の中さ。たとえ死んでいたのを食べようが、殺して食べてようが、食べてなかろうが、真実を知るのは私のみです。あなたの証言なんて、何の証拠にもならないでしょう」
亀助も状況によっては、もしかしたらカメオを許せていたかもしれない。
たとえ食べてしまったとしても。カメコを想い、受け入れ、全てが終わった後に丁重に弔ったカメコの墓前で謝っていたら、あるいは。
しかし、カメオは保身のためにその事実を隠し、挙句証拠隠滅のためにカメコの亡骸を捨てたのだ。
冷たい、海の底へと。
本来なら、カメコをしっかりと弔えたはずなのに・・・
「・・・そうだな」
亀助は、そう呟いて、カメオの前まで近寄った。
「ならばこれも、—— 猫箱の中だな」
そう言って。
思いっきり、カメオを突き飛ばした
「カメコに謝ってこい」
そしてもはや姿の見えぬ海の先へと、亀助はそう呟いたのだった。
簡易回答
男はウミガメのスープを飲んで、あらかじめ義理の息子のカメオから聞いていた味と全く異なっていたので、カメオが遭難時、ウミガメのスープを飲んだのが嘘だと気付いた。
カメコを食べたこと、証拠隠滅のためにカメコの亡骸を捨てたのだとわかった男は、カメオを許せず殺害した
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