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「料理を作ってみない?」
ある日、そう提案されたカメオ。カメオはまだ一度も料理をしたことがなく、いつもはカメコが料理を作っていた。しかしカメオも思うところがあったのか、生まれて初めての料理に挑戦することを決めた。

「包丁で指を切らないように気を付けてね」
「焦がさないよう火加減は注意してね」
度々アドバイスを受けながら、カメオは慣れない手つきで調理を進めていく。やや寡黙で少し面倒臭がりな面があるカメオであるが、料理には楽しさを見出だしたのか、心なしか明るい表情を見せていた。
苦労の末にカメオが作った料理は、見た目はともかく味はそれなりに食べられるものであった。

「初めてにしては、よくできてるじゃん」
そう言われて少し照れながら、カメオはふとカメコの顔を見た。いつもと変わらぬカメコの優しい微笑みは、今日のカメオにとってはなぜだか特別に明るい笑顔のように感じられたのであった。そうしてカメオは、これから1人で生きていくことを決意した
一体どういうことだろう?
[ブラダマンテ] [一つ星シェフ]

【ウミガメ】20年11月15日 20:55

Let's cooking

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今年で70歳になるカメオは、半年前に妻のカメコに先立たれてから、面倒臭がりと寡黙さが更に深刻化し、特に何をするでもなく寝てばかりで無気力な日々を送っていた。
家事全般も放置気味であったが、特に深刻なのは食事であった。料理は普段カメコに任せきりであり、カメオ自身は仕事一筋で料理など今まで一度もしたことがなかった。かといってコンビニやスーパーの弁当はカメオにとっては味が濃く、口にあまり合わないらしい。加齢による食欲の低下も相まって、カメオはほとんど食事をとらなくなりつつあった。

カメオとカメコの娘であるウミコは、結婚して親元を離れて暮らしていたのだが、そんなカメオのことを心配し、家がそこまで離れていないこともあり度々カメオの下を訪れ、家事など身の回りの世話をしてあげていた。その上でウミコはカメオに対し、「自分たちの家で一緒に暮らさないか」と提案していた。それに対しカメオは、カメコと住み慣れた家を離れることに抵抗があるのか、「考えさせてくれ」と返事を留保していたのであった。

ウミコ「でも…お父さん、私がいないときはご飯もまともに食べてないんでしょ?このままじゃダメだよ」
カメオ「そうは言っても、料理なんかできんし…外の飯も、食えたもんじゃない。仕方がないだろう…。」
ウミコ「…いや、良いこと思い付いた。お父さん、自分で料理を作ってみない?それなら自分の好きな食事が出来るようになるよ!」
カメオ「…なに…!?いや…しかし料理なんか一度も…」
ウミコ「大丈夫、私が教えるから!今の時代は男でも普通に料理するもんだよ!よし、そうと決まったら買い物行ってくる!まずはご飯と味噌汁からね!」
カメオ「お、おい待て…!…行ってしまったか…うーむ……」

実はカメオには、「このまま死んでも構わない」と思う一方で、「本当にこのままで良いのか」という葛藤があったのも事実であった。一度決めたことは曲げないというウミコの性格もあり、カメオはウミコの提案に従うことに決めた。そうして、ウミコが見守る中でカメオが生まれて初めて料理に挑戦することになったのだ。
ウミコ「包丁で指を切らないように気を付けてね」
ウミコ「焦がさないよう火加減は注意してね」
カメオ「わ、わかってるが…」
カメオ「(これは、思っていた以上に骨が折れる…。しかし"あいつ"は文句の一つも言わず毎日毎日…。あいつはどんな思いで、料理を作っていたのだろうな…。)」
ウミコ「(お父さん、心なしかいつもより生き生きしているような…?)」

苦労の末にカメオが作った料理は、見た目はともかく味はそれなりに食べられるものであった。カメオの好みの薄い味付けにしてあるので、カメオにとって美味しく感じられるのも当然である。
カメオ「(これなら、食える…自分で食事を用意するのも悪くはないな…)」
ウミコ「うんうん。初めてにしては、よくできてるじゃん。美味しいよ。」
カメオ「む。そ、そうか…」
ウミコ「(ふふ、お父さん照れてる)」
決まりが悪くなったカメオはふと、カメコの遺影が飾られている仏壇の方に目をやった。遺影に映ったカメコは、生前と同じ優しい微笑みを浮かべているままである。しかしカメオには、なぜだかそれが特別に明るい笑顔のように感じられ、目を見張った。
カメオ「(!?…カメコ…気のせいか…?)」
カメオ「(…いや、きっと、カメコは…最近は、不甲斐ない姿ばかり見せて済まなかったな…。これではお前も、あっちで安心して過ごせないだろう…)」

ウミコ「…お父さん、どうしたの?」
カメオ「…ああ、いや、何でもない。それよりカメコ、一緒に暮らさないかという話なんだが…」
カメオ「…やっぱり、これからも…慣れ親しんだこの家で、1人で暮らしていきたいと…思う。これからは、自分で家事もやるし…飯も自分で作って食べる。余裕が出てきたら、地域の老人会にでも参加してみようか…。とにかく、お前に心配は掛けさせないようにする…。その代わり、家事のことや他の料理も教えてほしいんだが…」
ウミコ「…そっか。わかったよ、お父さん。でも、これからもたまに子供や旦那連れて遊びに来るからね。」
カメオ「…すまない。ありがとう」

ウミコ「(本当は一緒に暮らした方が色々と安心なんだけど…。でも、あんなに生き生きしたお父さんは久しぶりに見たし、あれなら1人でも大丈夫かな。それにしても、まさか料理がここまで効果があるとはね…。何か思うところでもあったのかな。…とにかく、これからも元気に長生きしてね、お父さん)」

カメオ「…カメコ、見ているか?おれは、もう少しこっちで頑張ることにするよ…。待たせることになってすまないが…どうか、それまで見守っていてくれな…」

簡易解説
仕事一筋で家事を妻のカメコに任せきりにしていたカメオ。70歳になり、妻に先立たれてからは無気力な生活を送っており、食事もとらなくなりつつあった。二人の娘であるウミコは、カメオを心配して、カメオに料理をしてみることを提案する。「このままの生活で良いのか」という思いがあったカメオも、生まれて初めて料理に挑戦することを決めた。
ウミコからアドバイスを受け、慣れない手つきで料理をするカメオであったが、料理に少しずつ楽しさを見いだし、また自分好みの料理を作れたことで久しぶりに食事を楽しんだ。ウミコからも味を褒められたカメオは、照れ隠しにふとカメコの遺影が飾られている仏壇を見た。すると、カメオの心に変化があったためか、遺影の中のカメコの微笑みが特別に明るい笑顔のように感じられたのであった。「カメコが自分を見守ってくれている」と感じたカメオは、今までの生活を改めてウミコや天国のカメコに心配を掛けさせないように1人でもちゃんと生きていく決意を固めるのであった。
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