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愛の形は十人十色 果たして何色あるかしら」のGoodトリック・物語・納得で良かったら1票分。全体評価で特に良かったら3票分Goodができます。
社員食堂の隅の席で私が遅めのランチを食べていると、七海が近づいて来て、耳打ちする。

武部課長と篠原さんが不倫しているらしい、と。

「えっ?」

「驚いてる驚いてる。意外や意外の組み合わせだもんねえ。まさか、あの二人がねえ」

私が常日頃、醜いと蔑んでいるでっぷり太った武部の巨躯と、華奢ながら均整のとれた篠原の体…

おぞましい光景が脳裏に浮かび上がりそうになって、私は慌ててかぶりを振った。

「総務の竹下さんがバッチリ目撃したらしいよ。言い訳できないような場所でさ」

「へえ…そうなんだ」

「怖いねえ。どこに誰の眼があるかわからない。一億総パパラッチ。お互い気を付けよー。ツンツン」

と七海はニヤニヤと笑いながら私の脇腹を指で突いてくる。

「ていうか七海さ、今こんなところでそんな話しなくても…」

私と七海は今夜仕事の後で食事する約束をしていた。

「噂話は新鮮さが命」

笑いながら言う。

「じゃ、先にもどるわ。また後で~」

食堂を出てゆく七海の後姿を見送りながら、私は考えていた。

これは何かの啓示なのだろうか。

決断する潮時なのかもしれない。取り返しのつかないことになる前に…


その夜。

ひとりの男が刺され、ひとりの男が自首し逮捕された。



一体何が起こったのか?

誰が刺され、誰が刺したのか? その理由は?

解答は可能であると信じている。

想像の羽を広げてみていただきたい。
[きまぐれ夫人]

【ウミガメ】【闇スープ】20年10月12日 18:49
解説を見る
簡易解説

刺されたのは私。刺したのは七海。

別れ話を切り出した私の腹に、逆上した七海が包丁を突き刺したのである。


解説

痛みで目覚めた。

暗い。

ここは?

…そうか。病院のベッドの上だ。

どれくらい意識を失っていたのだろう。

どうやら私は命拾いしたらしい。

いや、死ねなかったというべきか。


あの夜。

仕事終わりに落ち合った私と七海は、軽く食事を済ませ、七海の家に向かった。

部屋に入るなり抱き寄せようとする七海をやんわりと制し、私は別れ話を切り出した。

もう、やめにしよう、と。

不倫は必ず露見する。武部と篠原のように。

そうなったら、私もお前も身の破滅だ、と。

しかし、それはうわべだけの口実で、私の心はとっくに七海から離れていたのだ。

初めは笑って取り合わなかった七海だが、私の本気を感じ取ると、激昂した。

悪態をつき、喚き、他の男に乗り換えるつもりか、と叫んだ。

「ああ、そうだよ。お前に飽きたんだ。次は篠原さんを誘ってみようか」

と私は言った。

七海の顔がスッと白くなった。

彼はゆっくりとキッチンに向かい、やがて包丁を手に戻ってきた。

私は動かなかった。

七海が飛ぶように私にぶつかってきた…。


覚えているのはそこまでだ。


私は死にたかったのかもしれない。

なにもかもが、もうどうでもよくなっていたのだ。

そう。

篠原と武部の不倫を知らされてから。

篠原の引き締まった痩身が、豚のようにダブダブの醜い女に蹂躙されていると知ってしまった今、

私には理性を保ち続ける自信が無い。

やはり私は死にたかったのだ。

一度は愛した七海吾郎の手に掛かって。


しかし、死ねなかった。


七海はあれからどうしただろうか。

私はこれからどうなるのだろうか。

明日になれば、私が意識を取り戻したことを知った警察がやって来る。

会社は辞めることになるだろう。

妻はきっと取り乱すに違いない。

忙しくなりそうだ。

気が重い。

せめて今はゆっくり休みたい。

まだ見ぬ篠原の裸身を思い浮かべながら。
トリック:2票物語:2票
全体評価で良質部門
トリック部門
アカガミ[1問正解]>>コメントなし
琴水>>トリックというよりレトリック?になるんだろうか。バランスよく謎を相互補完できる文章が秀逸だと思いました。
物語部門
アカガミ[1問正解]>>コメントなし
もこたろ>>コメントなし
納得部門