「頭を抱える男」のGoodトリック・物語・納得で良かったら1票分。全体評価で特に良かったら3票分Goodができます。
朝、ベッドの中で目を覚ました男は、サイドテーブルの上の紙を見たあと、そっと自分の頭を触った。
手に触れたのは特に異常のない、ごく普通の自分の頭部。
そのことに男は愕然とし、絶望した。
一体なぜ?
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眠りから覚めた男は、まだぼんやりした頭で、昨夜のことを思い出していた。
……暗い道、横断歩道を渡ろうとしていた時…強烈なヘッドライトの光、
突然の衝撃に何が起こったか理解する間もなく、身体が跳ね飛ばされた。
俺の頭はコンクリートに叩きつけられ、頭蓋骨が砕ける嫌な音がした。記憶はそこで途切れている。
そうだ、俺は昨夜信号無視したバイクに撥ねられ、大怪我をしたのだ。
ここは病院だろうかと身を起こすと、予想に反してそこは男の自室だった。しかしいつもと少し様子が違う。
あちこちにメモが貼り付けてある。一番近く、サイドテーブルに置いてある一際目立つメモを読んでみた。
『俺は怪我の後遺症のため、記憶障害を患っている。
俺の記憶は数十分しか持たない。』
男は信じられない思いでその文を読み、恐る恐る頭に触れた。昨夜コンクリートの上で潰れた部分だ。
そこに生々しい傷はなく、包帯も巻かれていない。痛みもかさぶたさえもない。
とうに外傷は完治している。明らかに怪我をしたのは『昨夜』ではないのだ。
いったいあの時から何年が経ち、俺はこの朝を何千日繰り返しているのだろうか。
今日もまた、男は愕然とし、絶望した。
物語:2票
物語部門
イトラ>>
『ウミガメのスープ』を思わせるような、濃厚な作品です。