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カイトに片思いしているユキミは、最近になって、カイトの姿を目にすると必死で息を止めるようになった。
どういうこと?
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「大丈夫ですか?」
その柔らかくて心地よい声と、さらりと流れる長めの黒髪。差し出された手は、暖かくて。
その時ユキミは、恋に落ちた。
その日以来、ユキミは、隣の家に住むカイトに片思いしている。
だが、いつも多忙なカイトの姿を、ユキミが見ることはほとんどなかった。
そんなユキミが、唯一カイトの姿を見ることができる時。
水曜日の、朝七時。
普段は早くに家を出るカイトだが、毎週水曜日だけは、ユキミも起きている時間に家を出る。
家を出るカイトを、部屋の窓越しに見ることが、ユキミのささやかな幸せだった。
赤く染まった葉が降り積もり、冷たい風が吹き始めるころ。
水曜日の、朝七時。
ユキミはいつものように窓辺に立つ。
カタリ、と扉を開ける微かな音が聞こえた。
はやる気持ちを抑え、窓に顔を近づけた、瞬間。
ユキミの視界が、白一色に染まった。
冬になり気温が低くなったため、ユキミの吐き出した息で、ガラス窓が曇ってしまったのだ。
慌てて窓を拭い、外を見た時には、もうカイトの姿は見えなくなっていた。
その日から、冬の間は、カイトが見えなくなるまで、ユキミは必死で息を止めるようになった。
カイトの姿を見るために。
とある水曜日の、朝七時。
必死で息を止めるユキミが立つ窓を、カイトがちらりと見た。
視線が絡み合い、カイトがユキミに軽く手を振る。
再び、ユキミの視界が白一色に染まった。
慌てて窓を拭い、外を見た時。
カイトはまだ、そこにいた。
簡易解説
カイトに片思いするユキミは、いつも、部屋の窓からカイトが出かける様子を見ていた。
だが、冬になったため、窓に近づくと息で窓が曇り、カイトの姿が見えなくなってしまう。そのため、ユキミはカイトが出かける時、カイトの姿を見るために、息を止めるようになった。
物語:4票