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その日は地元の夏祭り。

屋台で売られているお面を買って来れば良かった、なんて男は的外れなことを思った。


どういう事だろう?
[藤井]

【ウミガメ】18年08月12日 00:26
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※残酷な描写があります










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僕は妻のカメコと暮らしていた。
3年前、僕たちの間に新たな命が宿ったのだが、悲しいことにその命はこの世に産み落とされる前に息を止めてしまった。
死産だった。
カメコはひどく塞ぎ込み、僕も辛い日々を送った。

このままでは駄目だと感じた僕は、犬を飼うことを提案した。
その翌年の春、愛くるしい目をした大きなラブラドール・レトリバーが我が家にやってきた。
僕らは、子どもにつけるはずだった「アイコ」という名をその犬に託した。
アイコが来たことによって、僕たちの日々は温かく賑やかなものになった。好奇心旺盛で懐っこいアイコは、カメコに飛びついて甘えたがった。カメコはそれを喜んだ。
アイコの存在により僕らはようやく、愛娘の死産という現実を数年越しに受け入れることができたのだ。


心穏やかに暮らせるようになったちょうどその頃、僕は数ヶ月の長期出張で単身赴任することになった。
カメコは「アイコがいるから大丈夫よ」と快諾してくれた。その晴れやかな笑顔に僕は安心していたのだ。



僕が単身赴任を始めて1ヶ月が過ぎようかという頃、カメコに異変が起きる。電話の頻度が格段に上がり、「寂しい、早く帰ってきて」と書かれたメールが重なっていった。
電話で話を聞くと、アイコが心の支えになってはいるものの、僕という存在が急に日常から消えてしまったことにより、解消されたと思っていた不安が一気にぶり返してきたのだという。
大切な存在を失う恐怖。
毎日泣き続けるカメコのそばを、アイコは一時たりとも離れなかった。


2ヶ月が経った頃。
その日、僕の携帯は死んだように息を潜めていた。カメコからの電話もメールも、一件たりとも入っていない。昼休みにこちらから電話をかけても無反応で、メールの返信も来ない。
嫌な予感がした僕は、無理を言って午後休を取り、急遽自宅へ帰った。

この日地元は夏祭りで、最寄り駅の改札を抜けると浴衣を着た人や家族連れで通りは賑わっていた。
そんな中を掻き分けるように僕は無心でひた走る。

祈る思いで自宅の扉を開けると、何ともいえない異臭が鼻をついた。鼓動が急激に速くなる。
「カメコ!!アイコ!!」 
リビングに駆けていった僕の目に飛び込んできたものは、酷くおぞましい光景だった。
辺りに散らばる大量の薬の空袋。横たわる死体、引き剥がされた顔面部、傍に佇む口元を真っ赤に染めたアイコ。
テーブルには丁寧な筆跡で書かれた遺書があった。

「失う恐怖に耐えられません。ごめんね、先に行きます。アイコをよろしくね。 カメコ」


アイコは最期までカメコの傍を離れなかった。
僕は自分の意思と無関係にガタガタ震えだす体を他人事のように眺めながら、お祭りで売っているであろうファンシーなお面でもカメコに被せて、その見るに耐えない無残な彼女の顔を覆い隠してしまいたいと思った。


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要約
夫の単身赴任中に、情緒不安により妻は自殺。
その亡骸の顔面部を飼い犬が食べていたため、夫はお面で隠してしまいたい衝動に駆られた。

補足
犬が死んだ飼い主を食べるというのは、そこまで珍しくもないそうです…。また、その7割は腹部や胸部でなく顔なんだそうです。(グーグル先生より)
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