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粘膜王女三世さんのプロフィール

粘膜王女三世さんのバッジコレクション
コイン所持数:14C
ユーザー番号:3329
登録日:19年08月27日22時01分59秒
問題数:8
質問数:418
良い質問数:145
正解数:19
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SPしてもらった数:0
(SPとは?)
チャット発言数:0


 それはほんの悪戯のつもりだった。
 ただ妬ましかっただけなのだ。後から生まれたというだけでわたしの何倍もの愛情を両親から受け、何かと優遇され、どんなに愚かなことをしでかしても許され、それが当たり前のように振舞うあんたのことが。
 二人で信号待ちをしている時に、ふとその小さな背中を眺めていて、軽く手で押して驚かせてやれば楽しいだろうと感じた。それだけなのだ。
 だっていうのにあんたは車に跳ねられて死んだ。
 わたしのしたことはバレなかった。子供が突然道路に飛び込んだ。それだけの事故だ。事故で済んだのだ。
 わたしはただ黙っているだけで良かった。当時からわたしはそれができる程度には成熟した年齢だったし、そもそもわたしは賢かった。しっかり者で、冷静で、芯が強かったのだ。甘えん坊で泣き虫で愚鈍なあんたとは何もかも違う。
 だからわたしは今県下で一番良い高校に通っているし、運動ももちろん勉強もできて、恰好の良い彼もいる。両親は出来の良い娘を愛してくれる。
 目の前で妹を失った悲劇を乗り越えたヒロイン、それがわたしだ。
 だから邪魔をするな。
 無駄なことをするな。
 何回突き飛ばしたって同じなのだ。信号を待って横断歩道の前にいる時、あんたは当時と同じ小さな手で、弱い力で、わたしの背中を押そうとする。わたしにされたのと同じことをやろうとする。
 でもわたしはあんたと違ってトロくはない。いつだってそれに備えているし、多少の不意打ちにも耐えられる。
 「恵子って信号待ちの時一人で良く転ぶよね? どうして?」
 いろんな人に聞かれる。分からないとわたしは答える。
 でも平気なんだ。心配はいらない。こんな奴に殺されてやる程わたしはトロくないし、こんなことでくじける程心が弱くもないのだ。
 根競べだ。あんたがわたしを殺すのを諦めるのと、わたしがおとなしく殺されてやるのと、どちらが早いか。
 負けるつもりはない。当時からそうだった。わたしはどんな些細な勝負事でも、そうすることであんたが泣いてわたしが叱られるのだとしても、負けてやるようなことはしなかったじゃないか。あんただってそれを分かってるんでしょう?
 だからもういい加減、諦めて成仏するべきなんだ。