乾燥肌の恋人

スズコとケイジは恋人同士。二人はケイジのマンションで同棲生活を送っていた。
手が荒れやすいスズコのために、キッチンには洗い物用のゴム手袋が常備されていた。

今日はスズコの誕生日。しかし運悪くスズコは泊まり勤務だ。
残念がるスズコにケイジは「明日その分たっぷりお祝いしよう」と優しい言葉を送る。
そんなケイジに励まされ、スズコは仕事に勤しんでいた。

その一方、ケイジはなんと自宅に別の女性、タミエを招いていたのだ。つまるところ、浮気をしていた。
「え～、彼女さん急に帰ってきたりしない？怖いんだけど…」
「大丈夫大丈夫、今日は泊まりだし帰って来ないから」
二人は自宅で飲みながらおつまみを食べ、のんびりと過ごす。
帰る前にタミエは「洗い物していくね」とキッチンに立ち、スズコのゴム手袋をはめて洗い物をした。
そして洗い物を終え手袋を外すとき、小指にはめていた指輪が引っ掛かって手袋の中に落ちてしまう。タミエはそれに気付かず、そのまま帰ってしまった。



翌日、１日遅れの誕生日をケイジに祝ってもらうスズコ。
料理好きなケイジは自宅でスズコの好きなオムライスを作り、乾燥肌の彼女のためにハンドクリーム、それから指輪をプレゼントに選んだ。スズコはずっと欲しかった指輪をはめて、「私はケイジに愛されている」と幸せな気分に浸る。
ひとしきりお酒も楽しんだところで、「洗い物片付けちゃうね」とキッチンに立つスズコ。いつものようにゴム手袋をはめる……ん？指先に何かが当たる。探ってみると、小指サイズの細いリングが落ちてきた。どう見たって女物だ。スズコの指には先程ケイジにもらった指輪がはめられている。……じゃあ、これは誰の指輪？

「………ケイジ」

これまでに聞いたことのないようなスズコの低い震えた声に、ケイジは驚いて振り返る。
「何、スズコ、どうし……」


幸せムードは一変、二人は深夜の修羅場を迎えることになった。
ケイジは血の気とともにアルコールも一気に引いていくのを感じずにはいられなかった。