不思議な宅配便

『荷物があるなんて聞いてないわ。変なタイミングだし。本人に電話で確認しますから待っててくださいな』

<んー？もしもしー？お母さん？急にどうしたの？>
<桜ちゃん、ウミガメ運輸ってやつでうちに荷物送った？>
<うん送ったよ！鴨サブレー！どうだった？>
<……いや、まだ開けてないのよ。あとで食べるわね>


じゃあ配達員さんがいなくなったのは、こちらの声が聞こえなくて、ご不在と思ったから……かしら？きっとそうね。

母はインターホン越しに配達員を呼び戻し、今出ますと伝えた。



娘は家族に内緒で帰省していた。
母を驚かせたい悪戯心から宅配業者に変装していたが、思ったより母の警戒心が強い。

(電話なんかされたら携帯が鳴ってバレちゃう！！)

着信音と声がインターホンのマイクに拾われない位置まで逃げてから電話に応答。

(うん、電話は普通にできた。でも宅配業者としてはめちゃめちゃ不審じゃん。あらかじめ荷物あるって言ってなかったのは失敗だったな……大丈夫かな……)

『もしもしウミガメ運輸さーん？ごめんなさいね、聞こえるー？』

インターホンから母の声がする。急いで戻ると、今から応対しますからと言っていた。
良かった、バレてないみたい。

(……お母さんのびっくりする顔、早く見たいなあ。)

にやける顔を隠すため、帽子を深くかぶり直した。


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簡潔に。
「宅配業者は、母を驚かせたい娘の変装だったため」
でした。