足りないくらいがちょうど良い！

(簡易解説)
ラテ子とラテオはレストランで食事をしていた。ラテ子が口元にご飯粒を付けているのをみたラテオは、ラテ子に気を使って、トイレに行ったら？と言った。
ところがその意図に気づかず普通に用を足して席に戻ってきたラテ子に、ラテオは大慌て。もう直接言えば良いものを、どうしたら良いか分からず再びトイレに行くよう促してしまった。


(解説)
ラテ子とラテオはレストランに来ていた。
久しぶりのデートで2人とも緊張しつつ、楽しい時間を過ごしていた。
ここのレストランの料理は絶品なのだ。夢中でハンバーグを口に運ぶ。

すると。突然ラテオはこう言った。
「ラテ子、トイレに行ってきたら？」

…急に何を言い出すんだこの人は。
「えっ、どうして？」
そう聞き返してもカメオは口ごもり、何も言わなかった。

もしかしたら何か、サプライズでも用意しているのだろうか。
ラテ子はそれ以上追求するのをやめて、ワクワクしながらトイレに向かった。

…用を足し、手を洗って席に戻ると。
サプライズのケーキがあるわけでもなく、そこには焦った顔のラテオが居た。

「トイレ行ってきたけど…どうしたの？」
ラテオは慌てた様子で少し黙った後、ワタワタしながらこう言った。
「…もう一回、トイレに行ってきたら…？」
「…ん？」

ラテオは本当に何を言っているんだろう…？ラテ子はこの人頭がおかしくなったんだろうか、と心配になった。

再びトイレに向かう途中。途端にラテ子はハッとした。まさか。
次の瞬間ラテ子はトイレに駆け込んだ。店員が不思議そうな顔でこちらを見ていたがそれどころではない。
トイレに入り…そして鏡を凝視した。
そこには…ご飯粒をひとつ口元に付けた、自分の姿があった。

「……そういう事か。」
気が抜けてしゃがみこむ。笑いが込み上げてくる。
「うわー。私酷いなぁ…。」

ご飯粒が付いてるよと直接言えなかったラテオの意図に、全く気づけず意気揚々と席に戻った自分。
そして、ご飯粒を付けたまま「ただいまー」と何食わぬ顔で戻ってきた彼女に大慌てで、あろう事か再びトイレに行かせたラテオ。
なんて情けない2人だろうか。

(もう…直接言ってよ！対応に困って2回もトイレに行かせるなよ！)と、笑いが止まらなかった。どんな顔をして席に戻れば良いんだ。
ラテオはきっと私に恥ずかしい思いをさせないよう気を使って、慣れない対応をしてくれたんだろう。紳士的な対応とはいかず、もっと恥ずかしい結果になってしまったけれど。
…まさか、彼女がまたご飯粒を付けたまま帰ってくるとは想定外だったに違いない。
席に戻った時の慌てふためいたラテオの顔を思い出してしまい……お腹が痛い。

(案外、私達はうまくいくのかもしれないな。)
暖かい気持ちが込み上げてくるのを感じながら、ラテ子は笑顔でトイレを出た。


10年後のレストラン。そこにはとある夫婦が食事をしていた。
妻はスープを一口飲み、こう言った。
「覚えてる？あの日のこと。」
夫もスープに口をつけてから、苦笑いでこう言葉を返した。
「忘れたくても忘れられないよ…。」
そして2人は顔を見合せ、クスクスと笑いあった。