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絹の布を売ってほしいという頼みに応じ、とある富豪の屋敷を訪ねた男。
富豪との商談中、男の家に置いてある絹の糸が灰になった。
一体何故?
[アカミドリ]

【ウミガメ】26年07月26日 22:01

出題日を七夕にするか悩みました。

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簡易解説
絹は男に布を売ってほしいと頼んで留守にさせ、その間に布に使ったことにしていた(、絹が所持していた)糸を燃やした。
その理由は、布を作る際に自身の羽を使ったこと、ひいては鶴であることが男にバレないようにするためである。

解説
好き、だったのだと思う。
自由に飛び回っていた頃、一度も意識したことはなかったが。
翼を動かすために食べ、羽を休めるために眠る。
私の生はいつも、空と共にあった。

そんなことを考えながら、絹は木綿の綛を解き、糸の先端を囲炉裏の火で炙る。
すると、瞬く間に灯火が宿った。


熱い。
心地よい冷気を切る両翼の、右に突如現れた違和感。重りを載せられた天秤の如く、水平を保つことができずにふらつく。
熱を無視して翼を最大限、突っ張るように広げ、引っ張ってくる地面に抵抗する。
そうして空に縋りつきながら落ちることで、なんとか激突を免れた。

が、運の悪いことに人間がいた。
これでお終いか、と張りつめていた糸が切れ、そこからはされるがまま。

一本の異様に長く、毛の禿げかかった奇妙な羽根。今朝、繕った時には生えていなかったはずのそれを引き抜き、右の羽に水をかけた彼は、どこかへと歩いて行く。
そして戻って来たかと思えば、手にしていた草の葉を絞り、出た汁を塗りたくられる。

次第に痛みが引き、ついに飛び立てた時。
彼に救けられたこと。そして彼の優しさを、ようやく理解した。

絹と名乗り、彼の家で暮らすようになってから、幾つかの季節を経た頃。
ついに、その時の恩を返す時が来た。
羽根を抜く度に募る痛みと喪失感は、空が遠のくからだろうか。
それでも、躊躇うことはなかった。
私にはもう、必要のないものだから。
絹が、抜いた羽根に隠れていた傷跡を見た頃。
晴天を映した布が出来上がった。

あの布は、いくらで売れただろうか。
数年分の…あるいは。
残された寿命分だったかもしれない、私の空は。


「つっ、」
右手に感じた熱で現実に引き戻された絹は、慌てて持っていた糸を手放し、残りも囲炉裏へと投げ入れる。

糸が赤らみ、黒ずみ、少し白んだ後も。
絹はただ、ぼうっと眺めていた。
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