「不完全なアイ」のGoodトリック・物語・納得で良かったら1票分。全体評価で特に良かったら3票分Goodができます。
不動の人気を博していたアイドルのアイは、ステージ上からスポットライトを見て「彼氏との熱愛がバレてよかった」と思ったという。なぜか。


知りたいその秘密ミステリアス
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「みんな、聞いてくれ。
今作はユウキにセンターを任せる。
ユウキは初センターだが、みんなで盛り立ててやってくれ」
ついに、ついに。ずっと引き立て役だった私が、このグループのセンターになれた。
ずっとセンターで永遠のライバルだったアイが、週刊誌に彼氏とのデートを撮られたからだけど。
ざまあみろ。
結成から2年。徹底的に男の影を消して、真面目なキャラを貫いてきた。
クリーンに振る舞ってきた私の時代がついにやって来た。
何人かのメンバーが目を潤ませて私を取り囲むけど、アイの姿はない。
「一緒にがんばろう」「ウチが支えるね」と羨望の交じった周りの泣き声がとても心地よい。
私も「みんなありがとう」と、手近なキャプテンに抱きついて、涙を一筋流してやった。
フォーメーション発表から2ヶ月後。
厳しいレッスンを経て、いよいよ歌番組での初披露の時間がやってきた。
中心に立った私に、たくさんのカメラレンズが向けられる。
センターってこんなに気持ちいいんだ。
アイは今まで、この景色を2年間も独り占めしてきたんだ。
そう考えると、めちゃくちゃ腹が立つ。
そして、めちゃくちゃ気持ちが良い。
とにかく、今回の新曲の主役は。センターは私。
アイが二度とこの場所に戻ってこれないよう、完璧なパフォーマンスを見せつけてやる。
配置につき、前奏が流れ出した。まずは空気を大きく吸い込み、羽ばたくように天を仰ぎ──。
がちゃん
え、天井のライト
---
何かが潰れる音がして。
端っこにいたあたしの顔にも汚い血が掛かった。
今から2ヶ月前、フォーメーション発表の直前。
あたしは、ひそかに付き合っていた彼氏とのキスを週刊誌に撮られた。
「グループNo.1アイドル 遊園地でディープキス」の見出しと一緒に、清純派アイドルで売っていた「あたし」の不祥事はあっという間に拡散した。
あたしは今回、3列目の右端。
「当たり前だろう?いくら人気でも、週刊誌にあんな所撮られては示しがつかん。除籍されないだけありがたいと思え」とプロデューサーは言った。
フォーメーション発表の日は正直、「どうして」と思った。センターをやらせるにしても、ユウキはないでしょ。
アイツの方があたしより男遊びしてるし。口も悪いし。アイツが裏でファンのこと、なんて呼んでるか知ってるの?
いろいろ言ってやりたかったけど、不祥事がバレたばかりの今はタイミングが悪い。
好感度を上げようと早速ユウキを囲むメンバーをよそに、あたしはレッスン場を飛び出した。
歌番組初披露の日。あたしの前には、一人、二人の背中。
そして、スタンバイするカメラが全部、中央に向いている。
憎たらしい。まあ、どうせセンターも今回限りでしょ。歌もダンスも下手だし、かわいくないし。
前奏が始まり、あたしは羽休めする鳥のようにゆったりと俯く。そして──
がちゃん
ぐしゃ
「下がれ、みんな下がれ」
「おい、カメラ止めろ。音声も」
「え、嫌だ。ユウキ、ユウキが」
「ユウキさん、ユウキさん」
「収録ストップ。救急車、救急車」
「どうなってんだよ、おい」
「骨見えてない?」
「ユウキちゃん、ねえユウキちゃん」
「駄目だろこれ。終わった」
ただならない物音と周囲の声に顔を挙げたら、「新センター様」の周りに人だかりができていた。
天井に取り付けられた大きなスポットライトが突然、センターの定位置目掛けて落ちてきたみたいだ。
周りがどれだけ泣き叫んでも「新センター様」はピクリともしない。
もしもキスを撮られてなかったら、熱愛がバレていなかったら。
あの位置にいたのはあたしだ。
神様なんて信じたことないけど、あの不祥事のおかげであたしは助かってしまった。
そしてきっと、ユウキにはセンターに立つ資格がなかったんだ。
ユウキ、残念だったね。
あたしは一度も、あなたをライバルだなんて思ったことないけど。
人気アイドルの「アイりん」が今日だけは、あなたのために泣いてあげるね。
▽解説の解説
人気No. 1でグループのセンター常連だったアイは、不祥事のためにセンターを降ろされ、端に回された。
すると、センターポジションに収まった別のメンバーがスポットライトに押しつぶされて死んだ。
事故に巻き込まれなかったアイは「不祥事のおかげで序列が下がっていてよかった」と安堵したのだ。
今作はユウキにセンターを任せる。
ユウキは初センターだが、みんなで盛り立ててやってくれ」
ついに、ついに。ずっと引き立て役だった私が、このグループのセンターになれた。
ずっとセンターで永遠のライバルだったアイが、週刊誌に彼氏とのデートを撮られたからだけど。
ざまあみろ。
結成から2年。徹底的に男の影を消して、真面目なキャラを貫いてきた。
クリーンに振る舞ってきた私の時代がついにやって来た。
何人かのメンバーが目を潤ませて私を取り囲むけど、アイの姿はない。
「一緒にがんばろう」「ウチが支えるね」と羨望の交じった周りの泣き声がとても心地よい。
私も「みんなありがとう」と、手近なキャプテンに抱きついて、涙を一筋流してやった。
フォーメーション発表から2ヶ月後。
厳しいレッスンを経て、いよいよ歌番組での初披露の時間がやってきた。
中心に立った私に、たくさんのカメラレンズが向けられる。
センターってこんなに気持ちいいんだ。
アイは今まで、この景色を2年間も独り占めしてきたんだ。
そう考えると、めちゃくちゃ腹が立つ。
そして、めちゃくちゃ気持ちが良い。
とにかく、今回の新曲の主役は。センターは私。
アイが二度とこの場所に戻ってこれないよう、完璧なパフォーマンスを見せつけてやる。
配置につき、前奏が流れ出した。まずは空気を大きく吸い込み、羽ばたくように天を仰ぎ──。
がちゃん
え、天井のライト
---
何かが潰れる音がして。
端っこにいたあたしの顔にも汚い血が掛かった。
今から2ヶ月前、フォーメーション発表の直前。
あたしは、ひそかに付き合っていた彼氏とのキスを週刊誌に撮られた。
「グループNo.1アイドル 遊園地でディープキス」の見出しと一緒に、清純派アイドルで売っていた「あたし」の不祥事はあっという間に拡散した。
あたしは今回、3列目の右端。
「当たり前だろう?いくら人気でも、週刊誌にあんな所撮られては示しがつかん。除籍されないだけありがたいと思え」とプロデューサーは言った。
フォーメーション発表の日は正直、「どうして」と思った。センターをやらせるにしても、ユウキはないでしょ。
アイツの方があたしより男遊びしてるし。口も悪いし。アイツが裏でファンのこと、なんて呼んでるか知ってるの?
いろいろ言ってやりたかったけど、不祥事がバレたばかりの今はタイミングが悪い。
好感度を上げようと早速ユウキを囲むメンバーをよそに、あたしはレッスン場を飛び出した。
歌番組初披露の日。あたしの前には、一人、二人の背中。
そして、スタンバイするカメラが全部、中央に向いている。
憎たらしい。まあ、どうせセンターも今回限りでしょ。歌もダンスも下手だし、かわいくないし。
前奏が始まり、あたしは羽休めする鳥のようにゆったりと俯く。そして──
がちゃん
ぐしゃ
「下がれ、みんな下がれ」
「おい、カメラ止めろ。音声も」
「え、嫌だ。ユウキ、ユウキが」
「ユウキさん、ユウキさん」
「収録ストップ。救急車、救急車」
「どうなってんだよ、おい」
「骨見えてない?」
「ユウキちゃん、ねえユウキちゃん」
「駄目だろこれ。終わった」
ただならない物音と周囲の声に顔を挙げたら、「新センター様」の周りに人だかりができていた。
天井に取り付けられた大きなスポットライトが突然、センターの定位置目掛けて落ちてきたみたいだ。
周りがどれだけ泣き叫んでも「新センター様」はピクリともしない。
もしもキスを撮られてなかったら、熱愛がバレていなかったら。
あの位置にいたのはあたしだ。
神様なんて信じたことないけど、あの不祥事のおかげであたしは助かってしまった。
そしてきっと、ユウキにはセンターに立つ資格がなかったんだ。
ユウキ、残念だったね。
あたしは一度も、あなたをライバルだなんて思ったことないけど。
人気アイドルの「アイりん」が今日だけは、あなたのために泣いてあげるね。
▽解説の解説
人気No. 1でグループのセンター常連だったアイは、不祥事のためにセンターを降ろされ、端に回された。
すると、センターポジションに収まった別のメンバーがスポットライトに押しつぶされて死んだ。
事故に巻き込まれなかったアイは「不祥事のおかげで序列が下がっていてよかった」と安堵したのだ。
全体評価で良質部門
トリック部門
物語部門
納得部門
















