本屋で偶然同じ本を手に取ろうとして互いに一目惚れした男女。
晴れて恋人になった2人が、「あの時手に取ろうとした本は絶対に読まないようにしよう」と固く約束したのは何故だろう?
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売り場に並んだその新刊のタイトルは
『墓場まで持って行きたかった恥ずかしい話』
15人の若手作家の死ぬほど恥ずかしい話を集めて1冊の本にした、アンソロジー形式のエッセイ集である。
内容を鑑み、参加者名は伏せられてすべて匿名となっている。
うち1本を書いた私自身も、他に誰が参加しているのかは一切知らされていない。
ぶらぶら本棚に向かい、一般読者を装う気持ちでしかし非常にドキドキしつつ本に手を伸ばした瞬間、気づいた。
この人も、同じ本を手に取ろうとしている?
挙動不審気味に顔を向けてしまう。
同じ本に手を伸ばした相手と、視線が合ってしまう。
「「あっ...?」」
互いに相手の目の中に、自分自身の目に表れているであろう動揺を見出す
なんかこの人うっすら見覚えがある。あっ同業の集まりで...?
((まさか))
「あの」「もしかして...」
「変なこと言いますが、この本買う前に隣の喫茶店お茶でも飲みませんか?」
「いいえ!互いに口封じが必要...ですよね?」
* * *
それから何の効果かやけに話がはずんだ。
あちこち場所を変えて一緒に過ごしてその日の終わりには私たちは恋人同士になった。
お付き合いしましょう、それからあの本を読むのだけは互いに禁じましょうと、同じ気持ちを確かめ合って。
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