濡れ手に粟（アワ）でアワワワ

粟（アワ）の収穫時期を向かえていた、とある村に謎の商人が訪れ、ある村人に商談を持ち掛けた。

「詳しい事は明かせないが、粟（アワ）が大量に必要なんだ。1kg 千円で買い取りたい。」

1kg 千円なら、いつもの２倍の値段なので、その村人は喜んで粟（アワ）を売った。
そして謎の商人は、さらに商談を持ち掛けた。

「もっと粟（アワ）が必要だ。他の村人から買い取って、私に売ってほしい。今度は、1kg 2千円払う。」

そして謎の商人は、こう付け加えた。

「ただし、粟（アワ）を集めていることは、他の人には秘密にしてくれ。ライバル会社に知られると困るから。」

その村人は、事情は説明せずに他所の家の粟（アワ）を、1kg 千円で買い取って、謎の商人に、1kg 2千円で売った。

謎の商人は、同じ商談を複数の村人に持ち掛け、やはり粟（アワ）を買い集めていることは秘密にしてくれと頼んだ。
ただし値段は、商談を持ち掛けるたびに、どんどん吊り上げていった。

今年の粟（アワ）は高値で売れ、そして値段は上がり続けている。そんな噂が村に広まった。

村人どうしの間で、高値で粟（アワ）が売買されるようになり、
そうして最終的には、謎の商人の元に粟（アワ）が集まり、村に残る粟（アワ）が少なくなっていった。

粟（アワ）が少なくなってくると、村人どうしの売買の時に値段を吊り上げる者も出始め、
値段は急に吊り上がり、あっという間に、1kg 1万円を超えた。
その頃には、村のほとんどの粟（アワ）が、謎の商人の元に集まっていた。

謎の商人は、もっと値段を吊り上げ、粟（アワ）1kg 5万円と言われ出した頃に、
さらに粟（アワ）の相場が、1kg 10万円になるという噂を村中に広めた。

そして、村一番の金持ちで欲深いカメオの所に、謎の商人が訪れ、粟（アワ）を、1kg 5万円で売りたいと持ち掛けた。
今の粟（アワ）は高価でどんどん値上がりすると思っていたカメオは、1kg 5万円なら安いと喜んで承諾した。

謎の商人は、それまでに集めた大量の粟（アワ）を全部、1kg 5万円でカメオに売った。
カメオは、買った粟（アワ）を蔵にしまい込み、厳重にカギを掛け、
この粟（アワ）を売りさばけば、まさに「濡れ手に粟」の大儲けだとほくそ笑んだ。

翌日、まだ夜も明けきらないうちに、謎の商人は村から去り、二度と現れることはなかった。


その後、高価なはずの粟（アワ）が、いくらで売れることになるのか想像してみてください。


今あなたが想像していることが、バブル崩壊というものです。アワだけに。